新年度を迎えた1日、震災と原発事故で県内外に役場機能を移転している浜通り五町村の新採用職員に辞令が手渡された。「町のために何でもやる」「いつかみんなで戻りたい」...。自ら被災しながら古里の復興に貢献したいという職員たち。それぞれの思いを胸に、新たな一歩を踏み出した。
■決意固く 浪江町の4人
浪江町の臨時役場がある二本松市東和支所。馬場有町長が新採用者にコピー用紙で代用した辞令を手渡した。「浪江町職員に任命する」。緊急時の態勢のため、辞令には配属先は書かれていない。「町の人たちのために何でもやるということ」。震災の影響で辞退者も出る中、町職員として歩み出した四人に迷いはなかった。
「古里の復興が最大の目標」。地元出身の渡辺祐典さん(25)、小沢亜希子さん(22)、松本沙織さん(21)は口をそろえる。家族は無事だったが、原発事故が収まるまで家には戻れない。
実家で被災した松本さんは一時、兄がいる新地町に避難した。入庁日が迫る中で「大丈夫だろうか」と不安もあった。「でも避難所生活を送る人たちの方が不安でいっぱいのはず。そばで安心できるよう役目を果たす」と臨時役場のある二本松市東和支所に赴いた。
長谷川真也さん(25)は須賀川市出身。福島大在学中、中国に留学し、中国・興化市と友好関係を結ぶ浪江町で働くことを選んだ。震災後「少しでも役立ちたい」と臨時役場に駆けつけ一週間、近くの職員用施設に寝泊まりしてボランティアで事務処理を手伝った。
例年なら研修に入る新採用者も初日から実践となった。窓口対応や物資の運搬、避難所の運営など先輩に指導されながら1日中、動き回った。渡辺さんは「毎日が一生、忘れられない経験になる」と前向きだ。
地震が起きる一週間前に小学校の同級会を開いたという小沢さん。「みんなで必ず古里に戻り、また笑顔で会える日を信じて励みたい」と自分に言い聞かせた。
(カテゴリー:福島第一原発事故)