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フクシマからの報告2(6)不安残る暫定基準 土壌改良も道筋見えず

「またコメを作れるだろうか…」。飯舘村の山田さんは放射性物質が検出された土壌の再生を願う

 計画的避難区域に設定された飯舘村と川俣町山木屋で15日から住民の避難が始まった。両地域の農家も間もなく自宅を離れなければならない。農作物を育む大地には東京電力福島第一原発事故によって放射性物質が飛散した。水田からは国の暫定基準値を超える放射性セシウムが検出され、今年は主力作物であるコメの作付けができなくなった。
 「村に戻った時に再びコメを作れるのか」。飯舘村で稲作を営む山田長清(60)は例年ならば、水をたたえているはずの田んぼに目をやり、やり切れぬ思いを口にした。
 県は第一原発の爆発後、農家に対し田植えに向けた作業の自粛を要請、3月31日から2日間、原発から半径20キロ圏を除く県内の農用地70地点の調査に乗り出した。これまで国には作付けの可否を判断する上で必要な土壌中の放射性物質の基準値がなかった。さらに、放射性物質を含んだ農地を耕すことの影響も不透明だった。
 県の担当者は原発から北西側と中通りの広い範囲で予想以上に高い数値が出ていることに驚いた。間もなく春の作付けに入る。「早く基準を出してもらわないと大きな影響が出る」
 県が調査を終えてから1週間後の4月8日、国はようやく土1キログラム当たり5000ベクレル以下とするコメ作付けの暫定基準値を示した。玄米に吸収される土壌の放射性セシウムは全体の10%とする過去の分析が根拠だった。基準値内ならば食品衛生法で定められた穀物の摂取制限の暫定基準値である1キログラム当たり500ベクレルを下回る。食べることも、販売することも可能になるとの計算だ。その後、二度目となる県の調査で原発から30キロ圏内と計画的避難区域を除く県内全域で基準値を下回り、各地で田植えが始まった。
 ただ、国の基準値に疑問を抱く農家は少なくない。「収穫したコメの放射性セシウムは本当に500ベクレルを下回るのか」。コシヒカリ産地の一つである本宮市では一時、土壌から5000ベクレルに近い放射性セシウムが検出された。田植えはできるようになったが、市幹部の一人は不安を隠さない。国はコメ作りを認めた地域でも、収穫時に検査をする。万が一、基準値を超えれば、その間の苦労は水の泡となり、出荷することはできない。
 市内の20ヘクタールで稲作を営む後藤勇(59)は農業収入の7割をコメに頼っている。「たとえ基準を満たしても、本県産というだけで売れなくなったり、価格が下がったりすれば、経営は成り立たなくなる」と嘆く。
 「一度、放射性物質が入り込んだ水田を、よみがえらせるには土壌を改良するしかない」。県農林水産部研究技術室長の荒川市郎は放射性ヨウ素の半減期が8日なのに対し、放射性セシウムは30年と極めて長いことを挙げ、早急な改良技術の必要性を訴える。
 4月9日に県災害対策本部を訪れた農林水産相の鹿野道彦はコメの作付け制限に対する補償とともに土壌改良の実施を明言した。農水省の農林水産技術会議は、農作物の放射性物質吸収を抑制する作物肥料の散布、表土除去の手法など土壌改良の技術開発に着手した。今月下旬からは計画的避難区域でヒマワリや菜種を植える実験に乗り出す。
 しかし、国は技術開発の進捗(しんちょく)状況や実験のスケジュールなどは明らかにしていない。「農家にとって農地は先祖代々受け継がれてきた大切な財産であり、生きるすべなんだ。1日も早く道筋を示し、元に戻してほしい」。JA福島中央会参事の川上雅則は農業者の切実な思いを代弁した。(文中敬称略)

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