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【緊急時避難準備区域解除へ5市町村】 滞る復旧計画 国に不信、迫る期限

 東京電力福島第一原発事故による「緊急時避難準備区域」解除の条件として政府が掲げた復旧計画の策定に、関係五市町村は戸惑い、作業は滞っている。政府は公共施設などの除染計画や住民帰宅のスケジュールを盛り込むよう求めているが、有効な除染方法が示されず、住宅確保の見通しも立たないためだ。計画の提出期限が来月上旬に迫る中、「国の姿勢は一方的だ」とする批判が相次いでいる。

■国との乖離

 復旧計画に盛り込む必要がある学校やグラウンドなどの除染。細野豪志原発事故担当相は20日、緊急時避難準備区域の広野町で報道各社の質問に応じ、「国として責任を持って除染に取り組む」とあらためて強調。しかし同じ日に県庁で開かれた内閣府原子力被災者生活支援チームと市町村との意見交換会は国と市町村の意識が乖離(かいり)していることを浮き彫りにした。

 意見交換会には復旧計画策定を目指す関係五市町村の担当者も出席していた。国は「除染作業を進めるには地域の実情を把握している自治体の協力が不可欠」とした。しかし、具体的な施策は示されない。市町村からは「まず国が主体的に対策を明らかにすべきなのに」と批判の声が出た。

 さらに、除染した後に出る土壌などを市町村に仮置きするとした政府方針に「住民の理解が得られない」と拒否する意見が続出。「除染方針が出るのが遅い」「財政支援するというが根拠を明確に示すべき」と国の姿勢に反発の声が次々と上がった。

■除染対策

 「農地や林地をどう除染しろというのか。見当もつかない」。復旧計画づくりを始めた川内村の担当者はいら立ちを隠さない。

 村の大半は水田、畑、山林。農林業は村の基幹産業で、効果の上がる除染が行われなければ、帰宅後に住民は生活のすべを失う。だが、政府からは除染の方法や費用負担について示されない。復旧計画の策定も中断せざるを得ない状況だ。「原発事故の指定区域でコメや野菜を栽培しても、風評被害で売れないだろう」と住民は悲観する。

 楢葉町は、農地などの除染で除去した土砂の処理を課題に挙げる。山間部で一時保管すれば、水源への影響が懸念される。津波により、太平洋沿岸部の公有地はほとんど消失してしまい仮置き場が見つからない。

 病院や学校のある町内の中心部は警戒区域に指定されており、緊急時避難準備区域が解除され住民の帰宅が認められた場合でも、生活するのは難しいと町幹部はみている。

 広野町は帰宅の目安とする町内の放射線量の設定に苦慮している。個人が感じる「安全」の範囲は異なるためで、町幹部は「どこに基準を置くべきか。どう安全宣言すべきか手探りの状況だ」と苦悩は続く。

【背景】
 政府は9日、東京電力福島第一原発の一定の安全性を確認したとして、同原発から半径20キロ圏外の緊急時避難準備区域を一括解除する方針を決定した。

 対象の南相馬、田村、川内、楢葉、広野の5市町村が、(1)学校やグラウンドの除染(2)上下水道などのインフラ復旧(3)学校、医療機関など公共サービスの再開(4)住民帰宅のスケジュール−を盛り込んだ復旧計画を策定することを、解除の条件とした。提出期限は9月上旬。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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