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【緊急時避難準備区域解除へ】住環境の整備課題 青写真描けず

給食室前の側溝にたまった土砂を取り除く参加者=20日、南相馬市原町区・原町一小

 東京電力福島第一原発事故の緊急時避難準備区域の解除をめぐっては、除染の他にも地震や津波で住宅が被災した住民のためにどのように住環境を整えるか、教育施設の復旧をどう進めるかなど課題は多い。政府は具体的な見通しを復旧計画に盛り込むよう指示したが、自治体からは「現状では青写真を描くのは困難」との声が上がっている。

■戻る場所

 「緊急時避難準備区域を解除されたとしても住宅を失った住民はどこに帰ればいいのか。矛盾だらけだ」。政府から復旧計画づくりを求められた南相馬市幹部は嘆く。政府は緊急時避難準備区域を万が一の事態に住民が円滑に避難できる環境が整っている区域と位置付けている。このため区域内での応急仮設住宅の建設は認められておらず、地元は焦りを募らせる。

 市内では警戒区域内からの避難者や、震災と津波で自宅を失った市民が住居を求める動きが活発だ。9月までに入居できる約2000戸の仮設住宅には、すでに約2500件の申し込みがある。相馬、新地の両市町から提供を受ける計365戸を加えても、まだ足りない状況だ。民間借り上げ住宅も「提供できる数は限界にきている」(市内の不動産業者)という。

 一方、緊急時避難準備区域内では470戸以上が流失・損壊した。区域が解除されても、住民は自宅にも、仮設住宅にも、借り上げ住宅にも戻ることは困難。政府が今後、仮設住宅の建設を認めた場合でも、用地選定も含め完成までには数カ月かかってしまう。

 広野町も同様の課題を抱えている。町によると、津波による住宅被害があったのは約100世帯。町内に応急仮設住宅はないため、津波被害を受けた住民は区域が解除されても住む家がなく、すぐに戻ることはできない。

■ジレンマ

 田村市は教育施設の復旧を計画づくりの課題として挙げる。

 緊急時避難準備区域内では都路中や古道小の校庭のり面の土砂が崩れた。文部科学省の損害査定は秋ごろになる見通しだが、査定を待たずに補修工事に入れば補助対象から外れる可能性があるジレンマを抱えている。

 学校の再開は住民の帰宅に向けた重要課題だが、市教委の担当者は「復旧計画で再開時期をどう位置付けるか、判断がつかない」と頭を抱えている。

 南相馬市は住民や民間ボランティアなどの協力を得て区域内の除染に努めている。20日も県郵便局長会が主体となって区域内にある市内原町区の3小学校で高圧洗浄機を使った除染、除草を行った。約250人が参加して側溝の土砂をかき出す作業などに取り組んだ。ただ、市職員の一人は「どこまで除染活動の範囲を広げればいいのか。ゴールが見えない」とため息をつく。

■住民の足

 通学・通勤の足となるJR常磐線。復旧の見通しが立たない区間は多い。総合病院では医師、看護師などスタッフ不足が深刻となっている。交通インフラ、医療の基盤が整わなければ、住民が区域内に帰宅するスケジュールを組むのは困難だ。

 南相馬市の緊急時避難準備区域内で生活する自営業の男性(29)は「復旧計画をつくり実現できるよう、国が支援方針などを早急に示すことが必要だ」と強調していた。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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