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希望の家見つからず 公営住宅建設に障害

 特定避難勧奨地点からの避難を望んでも、希望に合った住宅を見つけ出すのは容易ではない。

■ミスマッチ

 「放射線量を考えれば自宅に居ることは不安だが、移ることのできる場所が見つからない」

 勧奨地点に指定された伊達市霊山町下小国地区の60代の主婦は気をもむ。夫と息子の3人暮らし。線量の値の低い場所に避難したい考えを市に伝えてあるが、市営住宅で空いているのはエレベーターの備わっていない建物の4階や5階。民間住宅では、「1K」など家庭生活に不向きな物件しか残っていない。市内では、この家族を含め11世帯が避難先を見つけられないでいる。

 南相馬市は指定を受けた131世帯のうち90世帯が避難を希望している。しかし、市が提供できるのは相馬市か新地町の仮設住宅に限られている。希望に反して県外のアパートを探すケースもあるが、市の担当者は「警戒区域の市民が避難している影響もあり、市内は物件が少ない。国は避難先の確保にも全力で取り組んでほしい」と求めている。

■特区に

 比較的、放射線量の値の高い渡利、大波両地区などで勧奨地点の指定が検討されている福島市。線量の値の低い市内西部に、来年中にも市営住宅を建設し、避難を希望する市民を受け入れる方針だが、実現には障害も多い。

 荒井地区などの西部地区は市街化を抑制する「市街化調整区域」で、区域内では公営住宅など都市施設の整備が認められていない。国に「建設特区」の採択を求めているが、回答はないという。

 当面、約100戸の建設を想定し、費用を10億円以上と試算する。公営住宅を建設する際、国の補助は全体の45%だが、地震や津波などで住宅を滅失した人を対象にする災害公営住宅は最大で75%の補助が出る。国に勧奨地点からの避難を「災害」として認めるよう県を通じて国に要請しているが、返事待ちの状態だ。「公営住宅は恒久的に使用とする建前があり、どう補助するか調整がついていないようだ」。市の担当者はもどかしそうに語る。

■国の対応に怒り

 政府の現地対策本部は今後、本宮、二本松など他の自治体でも詳細な線量調査を行い、特定避難勧奨地点の指定を検討する。

 しかし、東京電力福島第一原発事故から5カ月が経過しており、住民からは国の対応の遅さを指摘する声も出ている。詳細調査の対象となっている本宮市和田地区の20代の主婦の女性は2カ月と2歳の子どもを抱える。「原発事故以来、外で遊ばせないようにしている。詳細調査はなぜ今ごろなのか。遅過ぎる」と怒りを隠さない。

 一方、放射線量調査に当たる政府の原子力災害現地対策本部の職員は、現在の人員と機材では調査のスピードアップは難しいと理解を求める。「もう2カ月以上、休みを取っていない。お盆も仕事だった。福島市内のホテル暮らしもつらくなってきた」。猛暑と事故対応の長期化に疲れも見え始めた。

【背景】
 東京電力福島第一原発事故で、政府は局地的に放射線量の高い地点を「特定避難勧奨地点」として指定し、住民に自主的な避難を促している。事故発生後の1年間で積算放射線量が20ミリシーベルトを超えると推定される住居と、近隣の妊婦・子どものいる世帯が対象。6月30日に伊達市の104地点(113世帯)が指定されたのをトップにこれまで、南相馬市122地点(131世帯)、川内村1地点(1世帯)の計227地点(245世帯)が指定された。伊達市は76世帯が避難を希望し65世帯の行き先が内定。南相馬市は90世帯が避難を望み39世帯が移動した。川内村の1世帯は県外で生活している。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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