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事故から薄れる記憶 正確さ損なう恐れ 避難者の所在確認も難航

 県民健康管理調査で県は26日、県民への問診票送付を本格的に開始する。被ばくの状況を把握するため、東京電力福島第一原発事故発生当時の行動記録を正確に記録することが求められるが、時間の経過とともに県民の記憶は薄れつつある。

■時間の壁

 「あの時は大混乱だった。避難した当時、どこにいたのか思い出せと言われても無理だ」。問診票が県内で最も早く送付される富岡町の無職の男性(70)は、大玉村の仮設住宅で顔をしかめた。

 放射線の人体への影響を調べるためには、原発事故発生からの一定期間、どこにいて、何を食べたのか把握する必要がある。基本調査では、震災発生の3月11日から同25日までの滞在場所を1時間ごとに「屋内」「移動」「屋外」のいずれかから選ぶ。3月中に食べた食事、量まで詳しく答える内容となっている。

 福島医大に設けられた県民健康管理調査事務局には、先行調査が行われた地域の住民から「居場所を思い出せない。どうすればいいのか」といった問い合わせが、数十件に及ぶ日もあった。調査の土台となる行動記録の確定が難しいため有効性をただす厳しい意見もあったが、電話を受けた職員は「思い出せる範囲で回答してほしい」と答えるのがやっとだった。

■返答4割

 浪江町、飯舘村、川俣町山木屋地区の計2万8000人を対象に実施した先行調査では、当初約1割に当たる約3000件の問診票が「宛先不明」などで返送されてきた。県は町村と連携し追跡調査により居場所の把握に努めてきたが、今でも約300件が不明のままだ。

 市内が「警戒」「緊急時避難準備」「計画的避難」の3区域と特定避難勧奨地点、無指定に分断された南相馬市。市民1300人の所在が確認できず、現段階で問診票を送付することができない。担当者は「自分の健康状態を把握するため、ぜひ連絡先を教えてほしい」と呼び掛けているが、広報するアイデアが思い浮かばない。

 一方、開始から2カ月過ぎた先行調査の問診票の返答率は4割程度にとどまっている。県は問診票を送り返してもらうため、電話で催促することも視野に入れている。しかし、人件費がネックとなり実現するかは不透明だ。

【背景】
 東京電力福島第一原発事故を受け、県は県民の不安解消と病気の早期発見のため、全県民を対象に「県民健康管理調査」を実施している。6月から放射線量の高いとみられる浪江町、飯舘村、川俣町山木屋地区の約2万8千人を対象に問診票で被ばく量を調べる「先行調査」を実施。今月から残りの県民を対象にした問診票による「基本調査」を行う。10月から始める「詳細調査」では先行、基本両調査の結果、被ばく量が高かった人や避難区域に住んでいた人から採尿や採血するほか、18歳以下の子ども約36万人への甲状腺がん検査などを行う。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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