東日本大震災と東京電力福島第一原発事故で大きな打撃を受けた、いわき市四倉町の「とまとランドいわき」は2日までにトマトの出荷を再開した。多くの生産者が風評被害などに苦しむ中、専務の元木寛さん(35)は「今まで以上に安全でおいしいものを作って、福島県の産品をPRしたい」と意気込む。
平成15年の創業当時、いわき産トマトの知名度は低かった。日照時間が長いという土地の特性を生かして品質の高い商品を作り続ける。徐々に知名度は上がり、首都圏の一流ホテルや百貨店でも使われるほどになった。
積み重ねてきたものが「3・11」を境に崩れ去る。地震で施設が壊滅的打撃を受けた上、原発事故の影響で多くの従業員が避難を強いられた。「休業」という言葉が頭をよぎる。しかし、他の企業が努力して営業を続けるニュースを見て、「自分たちもやるだけやろう」と気力を奮い立たせた。震災から約1週間後、わずか六人での再出発だ。
5月までは無事な施設を使って出荷を続けたが、6月から8月下旬までは施設復旧のために出荷を停止していた。6月にまいた種が今、赤々とした実を付け、ようやく出荷が再開できた。従業員も戻り、施設稼働率は今月中旬に100%になる見込みだ。再オープンした会社の直売所には消費者の笑顔も戻ってきた。「今年のトマトは特に甘いね」「頑張ってね」−。温かい言葉が何よりの励みになる。
原発事故による風評被害との戦いは続く。定期的に放射性物質の検査をし、商品には「検査済み」のシールを貼る。出荷基準は国の基準よりはるかに厳しい"自主基準"を設定。消費者に安心して購入してもらうための努力は怠らない。
インターネットのホームページや直売所では地元の生産者の野菜なども販売している。「一丸となって復興に向けて頑張りたい」。震災を乗り越えた赤い果実を見詰め、誓った。
(カテゴリー:福島第一原発事故)