野田佳彦首相は8日、就任後初の地方視察で来県し、佐藤雄平知事と会談した。佐藤知事の要請に応じて復興目的の基金を創設する考えを示し、第3次補正予算案で原資の一部を確保するとした。さらに、第2次補正予算の予備費2200億円を活用した新たな除染のモデル事業を避難区域になっている12市町村で週明けから実施する方針を表明。東京電力福島第一原発事故に伴う損害賠償にも迅速に対応する姿勢を強調した。
会談で佐藤知事は「税収が減少しており、本県の再生に向け自由に活用できる財源が必要」と復興基金の創設を要請。野田首相は「第3次補正予算案に反映できるよう努める」と明言した。県は基金を県内全域の除染をはじめ産業再生に向けた施策などに活用する。
佐藤知事は原発事故収束と除染の推進、損害賠償への迅速な対応、地域再生特別法の制定も求めた。野田首相は除染対策の経費を第3次補正予算案に盛り込み、予備費も活用する方針を説明。原子力損害賠償支援機構を早急に設置する考えも示した。特別法制定については、作業を急ぐとした上で「福島の再生なくして元気な日本の再生はない。(施策の)具体化に向け政府を挙げて取り組む」とした。
12市町村で実施する除染のモデル事業では、それぞれの地域に合った適切な除染方法を検証し、本格的な除染につなげる。
野田首相は原発事故については「国にも大変、大きな責任がある。心からおわび申し上げる」と謝罪した。
会談は県庁で大半が非公開で行われた。野田首相は「福島の再生」を内閣の最重要課題に挙げており、細野豪志環境相兼原発事故担当相、平野達夫復興担当相、鉢呂吉雄経済産業相、中川正春文部科学相が同席した。
佐藤知事は終了後、報道陣に対し、原発事故の風化防止、風評被害の払拭(ふっしょく)、福島空港の利活用、本県への国際会議誘致に向けた取り組みも要望したことを明かした。放射性物質が付着した廃棄物の中間処理施設に関するやりとりはなかったという。
野田首相は県内での全日程終了後、報道陣の取材に応じ、放射性物質の付着した廃棄物を受け入れる中間貯蔵施設の県内設置に向け県、関係市町村と協議を進める考えを示した。さらに、中間貯蔵施設を最終処分場にする考えはなく、施設の安全管理に万全を期す方針を強調した。
一方、細野環境相兼原発事故担当相は除染のモデル事業の対象に山林も加える意向を地元側に示した。また、取材に対し、福島第一原発の事故収束に向けた工程表の「ステップ2」を前倒しして達成することは難しいとの考えを示した。「対流水から放射性物質を取り除くことの安定化は簡単なことでない」と述べた。
(カテゴリー:福島第一原発事故)