■元南相馬市職員の岡和田さん 「おだか会」設立へ始動
「いつまでも甘えていられない。自分たちで前に踏み出さなきゃ」-。元南相馬市職員の岡和田とき子さん(60)=同市小高区=は東京電力福島第一原発事故で警戒区域に設定された古里「小高」を思い、心を奮い立たせる。避難生活を続ける同郷の住民が励まし合い寄り添える「頑張ろうおだか会」の設立へ動きだした。
■避難者に参加呼び掛け「みんなで頑張る」
岡和田さんは大津波で小高区村上の自宅を失った。義父の勲さん(91)と近くの高台に避難し、押し寄せる津波を目の当たりにした。「津波の高さは松の木の倍もあった。雷のようなものすごい音だった」と振り返る。
大津波に続き、原発事故。古里に入ることすらできなくなった。親戚を頼って福島市に身を寄せ、今は勲さんと夫の薫さん(64)と3人で暮らしている。震災直後は友人との連絡が途絶えたが現在、多くの小高区民が福島市内に避難していることを人づてに知った。
友人と再会すると、なじみの顔に心が軽くなる。せきを切ったように言葉があふれ、会話は止まらない。
「みんな人が恋しかったんだ。コミュニケーションが取れる場をつくろう」。古里に戻れるかどうか不安な日々を過ごす中、住民同士が支え合える環境をつくろうと気持ちを固めた。
12日は岡和田さんの呼び掛けで南相馬市役所の出張所がある福島市役所で初めての会合を開き、福島市に避難している13人が集った。10月の設立を目指し、それぞれが知人に参加を呼び掛けることにした。
「大きなことはできない。けれど、古里に戻れる日までみんなで頑張りたい」と岡和田さんは言う。「小高」で結ばれた絆はさらに強くなっている。
(カテゴリー:連載・今を生きる)