東日本大震災

「連載・今を生きる」アーカイブ

  • Check

今を生きる 「あの日伝える」固い決意

震災発生時の様子を伝える民話を語る小野さん。左胸には会員バッジが光る

■被災した新地の語り部 小野トメヨさん
 郡山市のJR郡山駅構内にある、おばあちゃんの民話茶屋。「想像を超えた光景にみんな騒ぐどころかあっけにとられちまった」-。津波で自宅を失った新地町中島の語り部、小野トメヨさん(87)は、民話に仕立てた3月11日の体験を語り始めた。津波が引いた後の町を見た住民が言葉を失い避難所に戻ってきた場面では、客席から嘆息が漏れた。
 小野さんは東日本大震災当日の光景を語り継ごうと、県内外で「あの日の新地町」を語っている。
    ◇  ◇
 二十数年前から毎月、町内の小学校や児童館などに出向く。史跡「新地貝塚」にちなんだ鹿狼山の手の長い神様の話など、地元の民話を伝えてきた。震災後、東京都の次男宅に避難した。語り部仲間から励ましや出演の誘いが届いた。しかし、暮らしが一変し衣装や記録もなくなり、語る気持ちになれなかった。
 仮設住宅の入居が決まり、5月中旬に町に戻った。同月末、自宅跡の周りを散策していると、田んぼに見覚えのあるかすりが見えた。語り部の衣装だった。着物は汚れていたが、胸に着いていた所属するNPO法人語りと方言の会のバッジが目に留まった。「語りなさい」と背中を押されているように感じた。
 震災を語ることを心に決め、仮設住宅の入居者らと津波が押し寄せた時の様子や避難の緊迫感を聞き取り、話を作り上げた。
    ◇  ◇
 語りと方言の会で震災を題材にした語り部はただ1人。自分の話が民話なのか疑問に思うこともある。だが、語り継がれた話がやがて民話になると信じている。
 15日、新地小で地元の活動を再開した。「子どもたちがまたその子どもたちに伝え、震災の経験が地元に息づいてほしい。掛け替えのないものを奪った津波から、自然を恐れ敬う心の大切さが学べるかもしれない」と話している。

カテゴリー:連載・今を生きる

「連載・今を生きる」の最新記事

>> 一覧

東日本大震災の最新記事

>> 一覧