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矢祭、坂下で一般米出荷 待望の稲刈り

 県内で初めて一般米の出荷が可能になった矢祭、会津坂下両町で18日、待望の稲刈りが始まり、農家に収穫の喜びが広がった。両町は全ての本調査地点で放射性セシウムが検出されず、出荷が実現した。ただ、県産米の安全性をどう消費者にアピールするかが依然、大きな課題となっており、県やJAなど関係団体は連携して信頼回復に努める考えだ。

■「食べてもらってこそ、コメ農家」

 「取りあえずひと安心。この澄み切った青空のような気持ちだ」。矢祭町の農業小野博さん(62)は秋晴れの空を見上げ、収穫の手応えをかみしめた。

 県の放射性物質検査結果が17日に出てすぐに準備に入った。18日は25アールの水田に実ったコシヒカリを家族ら6人で丁寧に刈り取り、天日干しにした。「自然乾燥させるひと手間でコメの甘みが増し、一層おいしくなる」と期待を込める。

 東京電力福島第一原発事故の風評被害で本県産米に対する消費者の目は厳しいと覚悟している。「収穫するだけじゃ終わらない。しっかり販売し、みんなに食べてもらってこそ、コメ農家」と力を込める。

 会津坂下町の農業金子幸誠さん(63)は19日にも稲刈りを始める予定だ。受託分を含めひとめぼれ二ヘクタール、コシヒカリ十ヘクタールを作付けしている。「これで安全なコメとして出荷できる」と安堵(あんど)する。

 田植え前の県や町による土壌検査で、放射性物質濃度が国の暫定基準値を大きく下回ったため、例年通り作付けした。町が収穫前に独自に実施した稲わら検査で放射性物質は検出されず「大丈夫だ」と自分に言い聞かせてきた。しかし、県の本調査の結果が出るまでは「少量でも検出されれば大きな打撃を受ける」との不安が頭から消えなかったという。

 長年かけて培ってきた「会津米」のブランドは、県内の他地域と同様に原発事故の風評被害にさらされている。首都圏で農産物を直売した時、反応の厳しさを味わった。「消費者に理解してもらうには今後、安全という情報をしっかり発信し続けることが大切」と国や県、関係団体に訴える。

 矢祭、会津坂下両町の関係者も風評被害対策を強める必要性を強調する。矢祭町のJA東西しらかわ矢祭ライスセンターは首都圏を中心に全国各地に販路を持つが、責任者の佐藤剛さん(37)は「安全性をどう消費者にアピールし、分かってもらうか。本県稲作の将来が懸かる」と語気を強める。

 会津坂下町に本店があるJA会津みどりの長谷川正市組合長(61)は東京や大阪のコメの卸業者を回った際、消費者の心配を理由に「すぐには新米をスーパーなどの店頭に並べられない」と何度も通告された。「地道に歩き、検査結果を説明しながら理解を広げるしかない」と話す。

 県は、収穫後の玄米対象の本調査のサンプル数を農林水産省が示す数より二倍多くしている。出荷に際しては関係団体や企業と連携し、首都圏などで販売促進活動を重点的に展開する方針。

 県内の農家では独自に測定器を購入してコメの放射性物質を検査し、消費者の安心を確保する取り組みも広がっている。

 県によると、県内にはよく耕された粘土質の水田が多く、粘土に吸着しやすい性質を持つセシウムが稲に吸収されにくい面があるという。土壌が肥沃(ひよく)で、栄養素のカリウムが豊富に含まれていることもセシウム吸収を防ぐ役割を果たしていると分析している。

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