■いわき湯本温泉「新つた」女将 若松さん 19日、中国で講演
日本旅館国際女将(おかみ)会副会長でいわき市のいわき湯本温泉「雨情の宿 新つた」女将の若松佐代子さん(53)は19日に中国・広州で開かれる日中交流イベント「広州 JAPAN DAY」で復興をテーマに講演する。東日本大震災からの地域復興と観光復活に向けて「被災地の現状を伝えたい」と力を込める。
青少年を中心に日本の伝統や観光、食などを紹介するイベントで、在広州総領事館などの主催。大学生や高校生、日系企業に勤務する中国人など約3500人が招待される。
若松さんは5年前から毎年同イベントに出席し、着物の着付け実演などで日本の伝統を紹介してきた。講演では、市内の被災状況などを写真を使って説明し、安全で安心な本県の魅力も発信していくつもりだ。
震災で、旅館は客室の壁紙が剥がれるなどの被害が出た。9月中旬まで広野町の2次避難所となり、一時は町民約70人を迎え入れた。今月から一般客の受け入れを再開したが、東京電力福島第一原発事故の風評被害で客足は伸び悩む。「例年なら11月は年間を通して売り上げが最も多い時期。今は見る影もない」
落ち込む暇はないと自らに言い聞かせてきた。「前に進むためには少しずつ復興を目指す福島の姿を広く訴えていくことが大切」と考え、県外のさまざまな観光PRイベントに積極的に出向いた。10日に東京都で開かれた「ふくしま七転び八起き観光キャラバン交流会」では、首都圏の観光業者ら約200人を前に「ふくしま七転び八起き宣言」を読み上げた。盛大な拍手に包まれながら、観光を復活させたいとの思いを一層強くした。
海外でPRするのは初めてになる。「原発事故で福島は世界で最も注目を集める地域の1つとなった。まずは元気であることを伝えなければ」。女将の新たな挑戦が始まる。
(カテゴリー:連載・今を生きる)