■駐在所支える家族愛 都路の菅野浩司さん
東京電力福島第一原発から西に21キロ。警戒区域との境に近い田村市都路町古道の田村署都路駐在所主任・菅野浩司さん(38)の元に1月末、避難先から妻子が戻った。「一家で暮らすのが駐在所本来の姿」。菅野さんは家族の絆を支えに、地域を守る決意を新たにしている。
菅野さんは平成20年4月から現職。駐在所勤務は初体験だったが、都路の人たちの穏やかな人柄や風土にすぐに溶け込んだ。昨年3月11日、4年目の勤続を望み、留任の内示を受けた当日に東日本大震災が起きた。駐在所で激震を感じると、深夜まで被害確認に奔走した。
翌12日は浜通りからの避難者対応に当たったが、午後には田村市から都路全域に避難指示が出た。残りたがる妻真理さん(33)を「逃げろ」と説得し、長女真菜ちゃん(5つ)、長男瑛介ちゃん(2つ)を連れて三春町の本署に避難させ、自分は住民の避難完了を見届けた。
真理さんと子どもは伊達市の実家に身を寄せ、4月に三春町の警察官舎に移った。菅野さんは署の道場に寝起きしての通い勤務を経て5月に駐在所に戻った。離れた生活が続いた昨年末、夫婦で相談して4人で暮らそうと決めた。「放射能への不安を考えても、子どもが小さい間は一緒に暮らそう」と真理さんが申し出た。
駐在所の周囲は昨年9月に緊急時避難準備区域が解除されたものの、家に戻った住民は少ない。犯罪を防ぐ警察官の存在は地域の安全に欠かせない。「駐在所は住民とのつながりが最も強い職場。巡回などで留守にする間も妻がいれば心強い」と家族に感謝する菅野さん。小さな駐在所を家族愛が支える。
(カテゴリー:連載・今を生きる)