東日本大震災アーカイブ

医師確保で福医大に新講座 浜通り医療復興計画素案 課題解消は不透明 

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故で被害を受けた浜通りの医療復興計画を策定していた県は6日、計画の素案を県地域医療対策協議会で示した。相馬地域は医療機関の救急医療や情報共有の体制を整備し、いわき地域は病院の役割分担を促進させる。双葉地域は避難区域見直しを踏まえて対応する。福島医大に県が出資して災害医療支援の寄付講座を開設し、相双地域で不足している常勤医師確保につなげる。国が補正予算で計上した150億円の交付を受け、平成27年度までの期間で実施する。

 県が示した「県浜通り地方医療復興計画」の素案の概要は【表】の通り。相馬地域は中核となる二次救急医療機関の機能強化が課題のため、公立相馬総合病院の病棟改築、南相馬市立総合病院の脳卒中センター整備などに約30億円を補助。相馬中央、大町、鹿島厚生、小野田の各病院の機能も充実させる。三次救急医療を確保するため、相馬と県北間の搬送体制を確立させるとともに、福島医大との連携を強化する。

 いわき地域は、避難住民などで医療需要の増加が見込まれるため、医療機関の役割分担を促す。患者の症状に応じて急性期(松村総合、石井脳神経外科・眼科)、回復期(なこそ)、慢性期(中村)に対応するよう各病院を位置づけ、整備費などとして約39億円を充てる。いわき市が計画している新病院の整備も支援する。

 双葉地域は、約21億円を確保し、今後の避難区域見直しや住民の帰還状況を踏まえながら再開する医療機関を支援する。

 医師不足対策として新設する福島医大の寄付講座は4月に開設。全国から医師を募り、「特任教授」「特任准教授」などの立場で相双地域の病院などに常勤させる。公的身分を与え、現場や同大で災害医療を研究する環境を整えることで、人材確保と地域医療再生を目指す。平成24年度は4人分の人件費として6500万円を確保する。福島医大医学部の定員増に対応する実習棟整備などで長期的な視点での医師確保策も進める。看護師の定着には修学資金を貸与する病院への補助制度などを導入する。

 県は計画を10日までに国に提出する。国からの交付金を原子力災害等復興基金に積み立て、事業に活用する。