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【汚染砕石問題】被害建物 対策進まず 東電の賠償不透明 出荷業者 検査態勢を不安視

汚染されたとみられる砕石が使用された賃貸アパート。入居者は不安を抱えながら生活している=3日、福島市

 放射性物質に汚染された疑いのある砕石の出荷問題で、砕石が使われたとされる建築物の対策工事などが進んでいない。東京電力の賠償方針が示されないためで、二本松市のマンションは建設会社が鉄板で放射線を遮蔽(しゃへい)する工事を予定しているが、発覚から約1カ月半が過ぎても着手できないままだ。汚染砕石が使われたとされる工事箇所の放射線量の計測も遅れ気味で3日までに、約3割にとどまっている。一方、砕石や砂利の出荷基準案が一キロ当たり一〇〇ベクレル以下とされたことに砕石業者からは検査態勢を不安視する声が上がっている。

■不信感募る
 汚染砕石問題が発覚するきっかけになった二本松市の3階建ての賃貸マンション。室内の放射線量が屋外より高い1階は、4戸のうち三戸が空き家になった。残る一戸の住民も3月末に引っ越す予定だ。マンションを施工した建設会社は放射線を遮蔽する鉄板を敷き、応急工事を予定している。「2、3階は通常の線量だが、入居者に安心してもらうため早急に実施したい」という。
 しかし、2月中旬までに東京電力に応急工事の賠償を求めたところ「上層部と話し合う」としたまま連絡が返ってこない。同社の役員は「オーナーや住民の苦悩を考えると、いずれは建て替えを考えなければならないのに、応急工事でこんなに対応が遅いとは」と東京電力に不信感を募らせている。
 東京電力関連の賠償を担当する資源エネルギー庁原子力損害対応室によると、東京電力はマンションの線量低減措置に関しては賠償に前向きな姿勢を見せている。ただ、住宅に関しては白紙の状態だという。担当者は「マンションの応急工事は、入居希望者の風評被害対策の名目で賠償できるが、住宅の建て替えは、避難区域の住宅など財物賠償基準に密接に関わってくる。財物の賠償基準が決まるまで方向性を出すことは難しい」としている。
 「避難先でも放射性物質に悩まされるなんて」。汚染されたとみられる砕石を使った福島市の賃貸アパートに住む飯舘村の男性(58)は嘆く。「孫も安心して遊びに来ることができない。別の住まいがあれば、すぐに引っ越したい」と切実な表情を浮かべた。

■遠い全容把握
 経済産業省などによると汚染した可能性のある砕石を使用したとみられる施工現場約1100カ所のうち、放射線量の調査を終えたのは360カ所にとどまっている。同省などは測定員を増強し作業を急いでいるが、住宅産業窯業建材課の担当者は「連絡の取れない会社も多い。周囲の目を気にし測定を断る施工者もいる」と進まない調査の現状を語る。
 一方、調査結果を定期的に発表するようになった経済産業省によると、周辺より高い放射線量が測定された地点は2日現在72カ所と、2月15日時点の27カ所の3倍近くになっている。それぞれの放射線量は、決して高いとはいえないが、住民らへの不安を広げる可能性があり、早急な対策はますます重要になっている。

■新出荷基準
 4月から適用予定の放射性セシウム濃度を1キロ当たり一〇〇ベクレル以下とする出荷基準について、県内の砕石会社の反応は冷静だ。いわき市内のある会社は月1回、県ハイテクプラザで放射性物質を測定しているが、微量しか検出されないという。「基準は心配していない。取引先に説明しやすくなるメリットの方が大きい」と好意的に受け止める。業界関係者の1人も「地中に埋まっているものを砕石しているため、放射性物質はほとんど付着していない」とし、基準値による県内業者への影響は少ないとみる。
 しかし、基準が正式に決まれば1カ月おきに検査を実施する必要が出てくる。業界内には「検査機関が限られており、全ての業者がスムーズに検査できるかは疑問。検査に要する出費も課題になるはず」と心配する声も出ている。

【背景】
 二本松市のマンションの室内で屋外より高い放射線量が測定されたことをきっかけに、1月中旬、計画的避難区域となっている浪江町の砕石場から出荷された砕石が建築資材に使用されたことが発覚した。国や県は出荷した双葉砕石工業の砕石の流通先を調査している。経済産業省の専門検討会は本県産の砕石、砂利の放射性セシウム濃度を1キロ当たり一〇〇ベクレル以下とする暫定的な出荷基準案をまとめている。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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