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「3.11大震災・福島と原発」アーカイブ

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【「前線基地」の苦悩9】屋内でも防護服着用 施設改善 勧告生きず

池田氏が書き留めたメモ。福島第一原発2号機の事故進展予測が記されている

 東京電力の担当者の報告は最悪の展開を予測させた。「ついに来るものが来た」。大熊町のオフサイトセンターで、政府の現地対策本部長で経済産業副大臣の池田元久は感じた。震災発生から4日目、昨年3月14日の夕方だった。
 池田がその時に書き留めたメモが残っている。数字は2時間ごとの時刻と、予想される原子炉内などの状況を指していた。
 18:22 燃料露出
 20:22 炉心溶融
 22:22 格納容器損傷
 政府の事故調査・検証委員会や東電の中間報告によると、14日午後5時17分、福島第一原発2号機の原子炉水位が下がり、炉内にある燃料棒の一番上の部分まで低くなった。午後6時22分には原子炉内の核燃料が全て露出している、と判断された。午後8時ごろからは断続的に原子炉内の圧力が高まり、その圧力に抗することができずに、炉内に水を入れられなくなった。
 原子炉内の水が極端に少なくなり、「空だき」に例えられる状態だ。このままでは、核燃料が熱を発し続け、核燃料そのものが溶け始めてしまう。原発事故の中で最も憂慮される事態の1つとされる。
 福島第一原発所長の吉田昌郎は、核燃料が溶け落ちて圧力容器や格納容器などを貫通し、放射性物質が外部にあふれだす「チャイナ・シンドローム」が起きる可能性を考えた。1号機や3号機でも、注水などの原子炉の冷却に必要な作業ができなくなれば、同じ最悪の事態を引き起こす。吉田は、その阻止のために自らの死をも覚悟した、という。

■危機的な2号機
 池田は東京の対策本部と原子力安全・保安院長の寺坂信昭に直ちに連絡した。オフサイトセンターでも会議を招集し、各機能班長らに状況を説明した。池田は「いざというときに備えてほしい」と伝えた。
 間もなく、2号機で本格的なベントを実施する、との連絡がオフサイトセンターに入った。1、3号機の爆発時は線量が瞬間的に上昇したが、すぐに下がった。しかし、燃料が全て露出した可能性がある2号機でベントを行えば、1、3号機を上回る高レベルの線量変化が起きる可能性がある。オフサイトセンターに詰めた政府や県、市町村などの関係者は屋内にもかかわらず、放射能から身を守る防護服と全面マスクを身に着けた。
 県相双地方振興局からオフサイトセンターに派遣された住民安全班責任者の高田義宏は、電光の線量表示板の見える場所で活動していた。上部にセンターの屋外、下部にセンター屋内の環境放射線量が表示される仕組みだ。
 センターは福島第一原発から西に約5キロの距離にある。2号機が危機的な状況に陥っているころ、表示板の数字が、ものすごい勢いで高くなった。高田は、周囲から「ああーっ」との声が上がったことを記憶している。

■高性能フィルター
 総務省は、原発事故の約2年前、21年2月にまとめた「原子力の防災業務に関する行政評価・監視結果に基づく勧告(第2次)」の中で、全国のオフサイトセンターの問題点を指摘していた。大熊町のセンターにも触れた。
 「エアコンによる換気を想定した場合には、高性能エアフィルター等による被ばく放射線量の低減措置が行われていないので、放射性物質の影響を低減せずに外気を室内に取り入れてしまうことになる」
 だが、原子力安全・保安院は施設改善などによって備えを強化する機会をみすみす逃した。そして、センターは「3・11」を迎え、次々と起こる事態に持ちこたえられなかった。(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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