東日本大震災アーカイブ

避難区域見直し、ずれこみへ 賠償基準、住民支援策まとまらず 

政府が3月末に実施予定の東京電力福島第一原発事故による避難区域の再編で、放射線量が高い地域を抱える市町村の区域見直しが4月以降にずれ込む見通しになった。再編に伴う賠償基準や住民への支援策がまとまらず住民説明会を開催できない状態が続く一方、「帰還困難区域」を封鎖することへの反発などが出ているためだ。先延ばしになれば関係市町村の復興計画策定が遅れ、住民帰還の時期は極めて不透明になるとみられる。
 区域再編がずれ込む可能性があるのは年間線量が20ミリシーベルト超50ミリシーベルト以下の「居住制限区域」と、50ミリシーベルト超の「帰還困難区域」で、富岡、大熊、双葉、浪江、葛尾、川俣、飯舘、南相馬の8市町村が該当する。
 政府は線量に応じて「字」単位で区域を見直す方針を打ち出している。しかし、文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会は再編後の住民に対する賠償基準を明確に示していない。さらに、住民帰還に向け除染や雇用、産業振興などの対策を盛り込む政府の総合的な住民支援策もまとまっておらず、関係市町村や住民への区域再編に向けた説明会を開く見通しは立っていない。
 帰還困難区域に通じる公道を封鎖する方針に対しては、一部住民の反発が強く、政府関係者は「4月まで残された時間は少ない。関係する全ての市町村に再編案を提示するのは、諦めざるを得ない」との認識を示す。
 双葉郡内の各町村は住民帰還や避難区域再編後の地域再生に向けた復興計画作りを急いでいる。政府が新たな区域分けを示さなければ策定作業が停滞するのは必至だ。首長の一人は「詳細な放射線量の調査もしておらず、賠償の問題も解決されていない。スケジュールありきで物事を進めてきた国の姿勢はおかしい」と批判する。別の首長は「今後の生活や財産に関わる問題に対し、住民の理解を得るのは容易でない」と述べ、区域再編に向けては相当な期間を要すると指摘する。