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【「前線基地」の苦悩17】国の性急さに戸惑う 県に要望の余地なし

平成13年4月に行われたオフサイトセンター建設工事の安全祈願祭。完成時期などをめぐり県と国の交渉は難航した

 「1年間で完成させてほしい」
 「そんな短期間で完成させるのは難しい」
 平成12年4月。県消防防災課の災害対策係主査に着任した菊地英喜(49)は国の要請に困惑した。
 茨城県東海村のジェー・シー・オー(JCO)臨界事故の発生から半年ほどが過ぎていた。菊地が前任者から引き継いだ仕事は、事故を教訓に設置が決まった原子力災害対策拠点施設・オフサイトセンターの建設だった。
 菊地は以前、県教育庁文化課に在籍し、平成13年に完成した県文化財センター白河館「まほろん」の建設に携わった。その時の経験や過去の公共事業を例にすると、大規模な公共施設の建設には数年間が必要といわれていた。施設の規模や事業費の手当てなどで変わるが、平均的な施設は1年目に基本設計、2年目に実施設計、3年目以降に用地の造成・着工などに進み、さらに1年から1年半ほどかけて完成することが通例とされた。

■念押し
 本県のオフサイトセンターの場所は大熊町内にある「県原子力センターの隣にあるテニスコート」と、ほぼ決まっていた。
 「それにしてもわずか1年とは...」。県の担当者は国の性急な進め方に戸惑った。しかも、国は県の問い合わせに対して「工期を延ばすことはできない」と何度も念を押した。
 県と国との具体的な予算折衝で、県側の疑問は深まった。約6億5000万円に上る建設費の全額を国が交付金として負担することは最初から決まっていた。センターは国の主導で造る施設を意味し、県は建設場所選びと、建設のみを請け負うという役割分担のはずだった。しかし、実際には、国が用意した仕様を基本に、設計から発注、監理、完成までの一連の事務も県に任された。
 さらに、県の担当者を驚かせたのは、実質的に国の事業にもかかわらず、国が「維持管理費の全額を出すことはできない」という方針を示したことだった。公共施設の建設に当たっては、国でも県でも、完成後の維持管理費がどのくらい必要で、どの部署が負担するのかを事前に調整しておく。維持管理費が膨大になれば、後々、重い負担になりかねないからだ。
 国は「センターには県が使う部分もある」と説明した。しかし、あくまで国が設置を打ち出した施設であり、県として納得できる理屈ではなかった。
 県は国との交渉で、維持管理費も国が全額を交付金で出すとの約束を取り付けた。だが、県と国とのやりとりに時間がかかった。センターが起工し、安全祈願祭が行われたのは、13年4月。1年でようやく着工にこぎ着けた。それでも異例の早さだった。センターの完成までには、さらに1年を要した。

■下請け
 センターの開設から9年後、東京電力福島第一原発事故が起き、センターの設備や運営の課題が浮かび上がった。建設当時、センターに導入される通信機器などの設備は、原子力災害対策特措法の施行規則に規定されていた。県の要望が入り込む余地はほとんどなかった。「われわれはただの下請けにすぎなかった」。県職員OBの1人は自嘲気味に語った。(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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