「浪江町のことを忘れないでほしい」。東京電力福島第一原発事故の影響で休園している浪江町立苅野幼稚園の"卒園式"は31日、いわき市のスパリゾートハワイアンズで行われ、中野優子園長(60)が子どもたちに語り掛けた。
昨年3月に幼稚園に通っていた27人のうち、16人が集まった。避難先で新たに小学生になる4人は3月で幼稚園を卒業するはずだった。中野園長は「修了証書を渡すことはできないが、苅野にいたことを忘れないでほしい」と、自ら制作した「年少組"終了″証書」を4人に手渡した。
終了証書を受けた鶴巻匠音君(6つ)は栃木県佐野市に避難しており、4月から佐野市立田沼小に通う。「園庭で砂山を作って遊んだことが思い出。幼稚園のことは忘れない」と話した。
4人いた先生たちも全員職場が変わるなど転機を迎えている。昨年9月で60歳になった中野園長に対し、4月からいわき市の長倉小で2年生になる川崎美奈子さん(7つ)が手紙を読み上げ「豆まきや夏祭りなど楽しいことがたくさんあった。今までありがとうございました」とお礼の言葉を贈った。
中野園長は「子どもたちは落ち着いた様子で、心も体も以前より大きくなっていた」と成長を喜んだ。
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