■浪江中バスケットボール部
久々の懐かしい顔。息の合った同士、パスが飛び交い、シュートにつながる。東京電力福島第一原発事故により、散り散りになった浪江中バスケットボール部の仲間が31、1日の両日、猪苗代町の町総合体育館で「壮行試合」を行っている。卒業生10人は中学最後の思い出をつくり、高校での活躍を誓う選手も。離任する顧問は、仲良く汗を流す教え子を優しく見守っている。
原発事故のため、部員20人の自宅は全域が警戒区域となった。現在は10人が県外、10人が県内で避難生活を余儀なくされている。3年生は中学の部活動の集大成の年に「浪江中」のユニホームを着て活躍することはできなかった。浪江中は現在、二本松市の旧針道小で授業を再開しているが、部員は各地に離れ離れのままで、部活動再開の見通しは立っていない。
卒業生は新たなスタートを切る。男子部長を務めた木村謙太君(15)=福島市=は4月、福島工高に入学する。高校バスケの名門校でレギュラーを目指す。「今の仲間とは満足に大会出場が果たせなかった。仲間の思いを背負い、高校で活躍したい」と話す。女子部長を務めた金谷美穂さん(15)=いわき市内郷=は湯本高に進学する。部のメンバーとは電子メールでしか連絡が取り合えない状況が続く。「今回集まった思い出を胸に、進学してもバスケを続けたい」と語った。
顧問の室井章太教諭(26)は3年前に同校に赴任。小学校から続けてきたバスケットボールの楽しさを伝えようと顧問に就いた。卒業した3年生と共に「勝負の年」と心に決めていた。「生徒には、最後までやり遂げさせてやりたかった。悔いが残る」と唇をかむ。事故は全てを奪った。
室井教諭は4月から昭和村の昭和中に勤務する。浪江中で果たせなかった悔しさをバネに新天地で再出発を図る。
(カテゴリー:連載・今を生きる)