東日本大震災アーカイブ

「HIKOBAE」地元・相馬で上映 演技に涙の観客

終演後、出演者と共に謝辞を述べる塩屋さん(右)

 東日本大震災、東京電力福島第一原発事故に見舞われた相馬市の病院を舞台にした演劇「HIKOBAE」が31日、市総合福祉センターはまなす館で上演された。米ニューヨーク公演、東京公演に続く地元公演。昼と夜の2回上演され、被災者ら約600人が無料招待された。福島民報社などの後援。
 震災直後、市民の命を守る最前線で奮闘した医師や看護師、消防団員らを描いた演劇。放射能の不安と向き合う葛藤や地元の伝統行事「相馬野馬追」に懸ける思いなどを看護師役の趣里さん(21)、消防団員役の鈴木亮平さん(29)らが演じた。
 観客席では自らの姿に思いを重ねて涙を拭う姿が見られ、終演では立ち上がって大きな拍手が送られた。エグゼクティブ・プロデューサーで医師役として出演した塩屋俊さん(55)があいさつし、立谷秀清市長が謝辞を述べた。夜の部ではNY、東京両公演で集めた浄財が市震災孤児等支援金に贈られた。
 震災で殉職した市消防団員佐藤峰生さん=当時(30)=の父孝秀さん(57)は峰生さんの長男優瞳稀君(8つ)=磯部小=と観劇した。「当時を一つ一つ思い返して感極まった」と感謝した。制作に協力した相馬中央病院看護部長の庄司幸恵さん(47)は「あらためて前に進むための節目となった」と目元を赤くした。
 HIKOBAEプロジェクトでは震災後の相馬市の姿を追ったドキュメント映画を制作しており、今回の演劇の映画化も準備している。