■動植物の宝庫
地熱発電所建設に伴う自然環境への影響を懸念する声も広がる。星一彰県自然保護協会長は「国立公園内は動植物の宝庫。生物多様性が失われ、生態系に影響が出るのではないか」とみる。
磐梯朝日国立公園内には、県のレッドデータブックで絶滅の恐れが最も高い絶滅危惧1種に指定されているクマタカやオオタカが生息する。猛きん類は音に敏感で、地熱発電所運転に伴う音で姿を消してしまう恐れがあるという。
環境省が国立公園内で井戸を掘削する「垂直掘り」を条件付きで容認する方針を固めたことも悩みの種だ。公園内に施設が建設されることになり、それはまさに自然破壊を意味する。星会長は「温泉の関係者と連携し、設置に反対していく」と語った。
■雲つかむ話
地元自治体は地熱発電所建設計画の動向を慎重に見極めている。福島市の環境担当の職員は「地熱は半永久的に供給され、二酸化炭素排出量も少ない」とメリットを指摘する一方で、市内観光の核としている温泉地や自然への影響を懸念する。
猪苗代町の関係者は「まだ雲をつかむような話」とした上で、「発電所ができれば視察や環境学習などで多くの人が訪れる可能性がある。建設期間中の雇用確保や、固定資産税収入も期待できる」とも想定する。磐梯山周辺の磐梯、猪苗代、北塩原の3町村は足並みをそろえて対応することを確認している。
一方、二本松市の担当者は「現段階では情報が少なすぎる。市民や温泉関係者の反応を見ながら、対応するしかない」と今後の展開を見守る方針だ。
「脱原発」で再生可能エネルギーの導入拡大を目指す県は、地熱発電開発を「大枠としては推進している」(企画調整部)とするが、建設に関しては「地元の理解が不可欠」として開発業者、地元住民の双方の中間的な立場を取る考えだ。
(カテゴリー:3.11大震災・断面)