■いわきのNPO法人まごころワーク理事長 志賀博光さん(60)
「娘の遺志を継ぎ、震災孤児のために役立ててほしい」。いわき市内郷高野町のNPO法人まごころワーク理事長志賀博光さん(60)は、震災後に亡くなった次女・裕美さんの「つぶやき」をつづったポストカードを制作、売り上げを福島民報厚生文化事業団に寄付した。
裕美さんは重度の知的障害があり、博光さんが運営する障害者福祉作業所「たんぽぽ」で調理や小物作りに励んでいた。しかし、震災時のショックから次第に食欲などが衰え、昨年12月24日に28歳の若さで逝った。体力が衰える中で、震災の被災者、特に津波で親を失った子どもたちに心を痛めていた。
「娘の思いを形にしたい」。博光さんは裕美さんがよくつぶやき、書き残した詩や言葉を生かそうと考えた。「ねんね」「かわいい」「メロン」「いのち」「はかまいり」。5つのつぶやきがポストカードになった。
日々の何気ない営みを「ねんね」で表し、散った花びらを「かわいそう」と純粋な心で読んだ。知的障害がある女の子の心情を「かわいい」と表現した。数行の短い詩や言葉は裕美さんの生きた証し。同じ障害がある仲間は「裕美ちゃんの分まで頑張って生きる」と友を悼む。
カードは多くの人の共感を呼び、増版分も含め計1500枚が「たんぽぽ」で販売され、残りわずかになった。4月初めの段階での売上金10万円を博光さん、裕美さんの友人の関真梨子さん、鈴木絵理奈さんが福島民報社いわき支社に託した。裕美さんの「生きた言葉」とともに。
(カテゴリー:連載・今を生きる)