南相馬市の避難区域再編で唯一、帰還困難区域となった市内小高区金谷の佐山梅雄さん(54)は「頭を強く殴られたみたいなショックと先が見えない絶望感が残る」と、市内鹿島区の避難先にある仮設住宅で自宅の写真を見詰めた。
3月下旬、市職員から自宅が帰還困難区域に再編される見通しを伝えられた。母親のヒサさん(77)と区域再編で自宅に立ち入ることができると期待していただけに、胸が張り裂けそうだったという。
昨年10月に一時帰宅した際、自宅に続く山道は台風被害を受け、車の通行が困難になっていた。雑草は屋根の近くまで伸び、草を刈りながら玄関までたどり着いた。「5年間も入れない土地は当然、人の住めない場所になる。ついのすみかになるはずだったんだ」と言葉を詰まらせる。
自宅の放射線量のデータが14日、市から届いた。家の裏は地上1センチで毎時27・1マイクロシーベルト、地上1メートルで毎時18・9マイクロシーベルトだった。
「切り立った山の中にある土地が簡単に除染できるとは思わない。でも、戻りたい気持ちは裏切れない」と複雑な思いを口にした。
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