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「3.11大震災・福島と原発」アーカイブ

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【覆された備え4】学校シェルター浮上 核燃税活用立ち消え

昭和60年発刊の「大熊町史」に掲載された大熊中の建物。2年後、県は双葉郡内の学校施設の「シェルター化」を検討した

 県は東京電力から支払われる核燃料税の税率や使い道を5年に1度、見直した。昭和62年、県税務課が中心になって、3期目の課税期間に向けた準備を進めた。その検討の中で、ある職員が放射性物質から住民を守るアイデアを思い付く。
 原子力発電所が立地する双葉郡内の学校施設10カ所程度を分厚いコンクリートで覆う。原発から放射性物質が漏れ出した場合、住民が駆け込み、避難する...。
 福島第一原発が立地する大熊町の町長、遠藤正が唱えたシェルター構想に相通じる部分があった。

■チェルノブイリ
 県は昭和52年に自治大臣(当時)の許可を受け、核燃料税を設けた。福島第一原発1号機が運転を開始してから6年が過ぎた時期だった。
 5年ごとの更新に当たっては、課税を許可する国や、唯一の納税者である東電に納得してもらうことが欠かせない。
 ただ、高いハードルがあった。住民の安全や防災対策、産業の振興...。県は5年間にわたる税の使い道を、更新時期に合わせて国や東電に示さなければならない。それぞれの事業は核燃料税だけで行うわけではない。核燃料税と、その他の財源を合わせた形で進められる。
 核燃料税の税収を二百数十億円と見込む場合、5年間に行う事業の財源を合計すると、総額700億円程度に上る膨大な事業をそろえることが必要だった。
 県税務課は各部局に幅広い事業を提案するように呼び掛けた。その1つが「学校施設のシェルター化」だった。前年の昭和61年4月、旧ソ連でチェルノブイリ原発事故が発生し、周辺の住民が避難を強いられる事態が起きていた。
 「県内の原発でも事故が起きないとは断言できない。シェルター整備事業ならば国も納得するのではないか」。税務課職員は、公共施設の整備を担当する土木部に事業費を試算するように求めた。
 その結果、学校施設をコンクリートで覆い、放射性物質からの防護機能を高めるには、1カ所当たり2億~3億円程度かかるとの数字が出てきた。
 県は道路や橋、港湾などの従来の事業に加え、シェルター計画も合わせ、当時の自治省に持ち込んだ。同省の担当者はそれぞれの事業を確認し、3期目の5年間の課税を許可した。県が3期目に得た税収は281億円で、2期目を20億円近く上回った。

■制約なし
 ところが、学校施設のシェルター化は「幻」に終わる。
 そこには県の予算をつくる際のやりくりがあった。県に納められた核燃料税は、使い道に制約のない一般財源として扱われる。県は年度ごとの予算編成の際に、それぞれの事業の優先度や緊急性などを考えて、核燃料税を含めた幅広い収入を各事業の経費として振り分けている。
 シェルター構想に、なぜ予算が付けられなかったのかは、はっきりとした記録は残されていない。「核燃料税の収入を確保することが大きな前提であり、そのための事業探しに重きが置かれた。その検討の過程でシェルター整備が出てきた。ただ、原発事故が起きた今となって思えば、実現しておくべき事業だったのかもしれない」。当時の県の担当者はため息をつく。
 福島第一原発事故によって、双葉郡内を含む県内の広い範囲に大量の放射性物質が拡散した。郡内の一部地域は放射線量が高く、帰還の見通しさえ立たない。仮に郡内の公共施設を分厚いコンクリートで覆ったとしても、住民が地元に長期間、とどまることは困難だった。(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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