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今を生きる 不滅の美 作品に込め 白鳥、猪苗代湖、磐梯山... 観光復興の力に

賞状を手にする伊藤さんと優秀賞に輝いた「冬の使者」

■アジア大賞展3年連続優秀賞 郡山のデジタルアート作家 伊藤峰洋さん53
 白鳥が、青く輝く猪苗代湖と豊かな自然を背に羽ばたき、磐梯山が雄大にたたずむ-。「福島の風景はこんなに美しいんだと伝えたかった」。郡山市のデジタルアート作家・伊藤峰洋さん(53)は作品「冬の使者」に東京電力福島第一原発事故による風評被害で苦しむ本県観光の復興に向けた思いを込めた。コンピューターを駆使して仕上げた作品は、「2011アジアデジタルアート大賞展」のカテゴリーA(プロ対象)静止画部門で優秀賞に輝いた。
 東日本大震災以降、無力感に襲われ制作できない日々が続いた。被災地の沿岸部では多くのボランティアが津波によるがれきの撤去に励んでいた。復旧・復興に協力したいとの思いが募ったが、重機を使うこともできず役に立てない自分が悔しかった。「コンピューターを使えても意味がない。被災者のために何の力になるんだ...」
 昨年10月、会津若松市の実家に帰る途中、猪苗代湖畔に立ち寄った。紅葉の季節を迎え、いつもなら観光客でにぎわうはずの場所に誰1人いなかった。それでも、白鳥は忘れずに飛来していた。「白鳥は命を懸けて今年も来てくれた」。涙があふれた。
 福岡県など主催の大賞展開催の知らせが届いたのは帰省した数日前。白鳥と古里の姿を目にし、描くことを決めた。大賞展には12カ国から約800点の応募があった。優秀賞の受賞は3年連続。平成13年に大賞展が始まって以来、初の快挙だ。
 小学生の時に見た猪苗代湖に初めて飛来した白鳥の姿が忘れられないという。「本県を代表する観光地で生まれ育った気質が備わっているのかな」と伊藤さん。「これからも白鳥と素晴らしい古里の風景を描き続けたい」。本県の観光地が再び観光客の笑顔であふれる日を思い、制作を続けていく。

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