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帰還/川内からの報告(42)医療確保で安心を 限られる高齢者受け入れ

再開した診療所で患者に薬を手渡す吉岡さん(右)

 川内村唯一の医療機関にまだ人影は少ない。
 村の保健・福祉・医療の複合施設「ゆふね」内にある村立診療所は2日に再開した。内科の受診者は1日当たり平均約10人。震災前に比べると3分の1ほどだ。
 村は帰村者が少しでも安心感を持てるよう再開に当たり他の医療機関の協力を得て診療科を増やした。従来の内科と歯科に加えて、19日には月に1度の心療内科の診察が始まった。村民の震災後ストレスに配慮する狙いだ。整形外科や眼科の開設も目指している。看護師兼事務員の吉岡一清さん(37)は「診療科目が増えることで村民に安心感を与えられる」と期待する。
 しかし、震災前まで通っていた富岡町や大熊町の病院が利用できない不利益は大きい。いわき市の仮設住宅に避難している無職女性(60)は「村に戻ったら、冬にいわき市の病院まで夫を通院させることができるか不安」と声を落とす。村といわき市を結ぶ国道や県道は積雪が多く、道幅が狭い。「市内にいた方が病院は近いし、安心できる」と本音を漏らす。
 救急医療にも課題が見える。震災前、急患は大熊町の県立大野病院などに30~40分で運んだ。現在、二次救急の搬送先は平田村のひらた中央病院などだが1時間弱ほどかかる。村は復興支援で贈られたドクターカーや、福島医大のドクターヘリを活用して時間差を補い、傷病者の負担を減らしたいと考えているが今のところ出動はない。

 介護環境の変化も村民の帰村を阻んでいる。
 1日時点の村の登録人口は2862人。65歳以上は34%を占めており、高齢者対策はこれまでも村の大きな課題だった。「ゆふね」内で村社会福祉協議会が運営してきた通所介護施設のデイサービスセンターは、5日にお年寄りの日常生活動作訓練や入浴などのサービスを再開したが、まだ利用は少ない。統括生活相談員の古内伸一さん(43)は「帰村に向け高齢者が安心できる材料になるよう、事業を少しずつ軌道に乗せていきたい」と話す。
 震災前、介護を必要とする村の高齢者の多くは双葉郡内の施設を利用していた。だが、原発事故で休業や移転を強いられた。近隣の田村市や小野町の施設は双葉郡の要介護者を受け入れたこともあり、ほぼ満室という。村の担当者は「周辺も含め介護環境が整っていないことで、帰村をためらう人も多い」と分析する。
 村に唯一あった民間のグループホームは、いわき市の仮設住宅内に移転して入所者を世話しており、避難指示解除準備区域内にある施設での事業再開は見通せていない。原発事故という特殊事情の中、村民からは国主導による介護施設設置といった思い切った政策を求める声も聞かれる。
 村保健福祉課の秋元賢課長は「今後もさまざまな課題が浮き彫りになるはず。地道に環境を整え、村民の不安解消に努めたい」と話している。

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