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帰還/川内からの報告(43)新発電事業 活力に 働く場所の確保が大命題

村民に親しまれている「かわうちの湯」。リニューアル計画が進む

 村のシンボルである温泉が体と心を癒やしてくれる。
 「久しぶりに入ったけど、やっぱり村のお湯はいいない」。川内村上川内の三瓶トシさん(87)は、避難先から自宅に戻るたびに「かわうちの湯」に足を運ぶ。村や村商工会などが出資する会社「あぶくま川内」が運営する。現在は除染関係の作業員らからも重宝され、1日当たり100人ほどが訪れる。まだ居住人口540人余りの同村で、人が集う交流点になっている。
 施設は昨年8月に再開した。震災で露天風呂などが壊れたが、8月から改装と補修の工事が始まる。炭酸泉に入れるコーナーを設け、健康づくりの設備も取り入れて新たなニーズを掘り起こす狙いだ。
 1日の経費は15万~20万円ほど。現在の入館料1人200円では賄えないため、村からの指定管理料や同社の宿泊施設「いわなの郷」の収支でバランスを取っている。同社マネジャーの猪狩幸夫さん(62)は「人が集うことが活力になる。いわき市など周辺市町村からも来館者が増えるよう、道路を整備してほしい」と訴える。

 村に人が集まり、活力が湧く源は働く場だ。
 震災前、村民の雇用を賄っていた農業と沿岸の発電関連事業は原発事故で損なわれた。3選目の遠藤雄幸村長にとって雇用をどう取り戻すかが大命題だ。
 平成26年度の開始を目指す木質バイオマス発電事業はその1つだ。村面積の約9割を占める山林の除染は間伐が主な手法となる。その間伐材を発電に利用する。通常は1ヘクタール当たり約3割の立ち木を伐採するが、6割程度の「強めの間伐」を実施する。木材を焼却する発電施設には放射性物質を拡散しない設備を導入する。
 発電では別の構想も浮上した。村はドイツで省エネ建築などを促進する民間企業と、大規模太陽光発電施設導入の協議に向けた基本合意書を交わした。村内の約2ヘクタールにパネルを設置し、約3000世帯を賄える発電を想定している。
 村が来年1月に操業を予定する「農作物水耕栽培事業」も期待を集める。建物の中で人工光によって葉物野菜を栽培する。レタスの場合、露地栽培では1年に2回の収穫だが「野菜工場」では複数回の出荷が可能になるという。
 金型製造などの菊池製作所(東京都八王子市)は旧富岡高川内校の校舎を使い、8月にも操業を予定している。情報通信機器や精密電子機器を生産する。
 村再生に向け、これらの事業を確実に軌道に乗せることが課題となる。
 遠藤村長は「震災前に戻すという発想ではなく、新たな村に生まれ変わると考えている。屋内で生産する水耕栽培などクリーンなイメージを打ち出し、産業の活性化や雇用の確保につなげたい」と近未来図を描いている。
 (「川内からの報告」は終わり)

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