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【覆された備え12】浪江町に連絡入らず 10キロ圏の訓練なし

 「危機管理が希薄だった。国の責任で訓練することが本来の筋ではないか」。浪江町長の馬場有(63)は不満をぶつけた。
 今月21日、二本松市で開かれた国会の原発事故調査委員会(国会事故調)の場だった。馬場は国や県、東電から連絡がないまま、孤立無援で全町民の避難を決断した苦難の模様を再現した。

■通報連絡協定
 昨年3月12日午前5時44分、政府は東京電力福島第一原発事故の避難指示を半径10キロ圏に拡大した。大津波から半日が過ぎ、町は太平洋岸にある請戸地区などで被災者の救出を再開する矢先だった。
 圏内には、町民約2万1000人の8割程度が住んでいる。それまで、政府や県から全く連絡がなく、原発の危機的状況は町役場にいた馬場や町職員に伝わっていなかった。震災直後から停電が続き、町役場は非常用の自家発電を使った。馬場は避難指示の拡大をテレビで知った。
 町は平成10年3月、東電と通報連絡協定を結んだ。福島第一原発に異常が生じた場合、町は直ちに連絡を受ける手はずだった。
 「原子炉内にばんそうこうを落とした」。事故前に、東電は原発の安全性に大きな影響がないミスやトラブルまで事細かに町に報告していた。だが、町は最悪の事態の連絡を一切、受けなかった。
 「(原発がある)大熊町から社員が歩いてでも来られたはず。協定違反だ」。馬場は国会事故調の委員にやり場のない怒りを訴えた。

■地名を読み上げ
 避難指示の拡大から20分ほどの間に、町は10キロ圏外への住民避難を判断した。町内各地に設けられた防災行政無線から一斉にアナウンスが流れた。
 「立野、室原、末森方面に避難してください。町内から西の方に離れてください。自主的に避難できる方は114号国道を通り、津島小、津島中などへ避難してください」
 町は「原子力防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲(重点地域)」を福島第一原発から半径10キロにかかる行政区と定めている。原子力安全委員会の防災指針、県の地域防災計画に合わせて線を引いていた。
 だが、過去20回の県原子力防災訓練のシナリオに10キロ圏内の避難はなかった。事故発生から約4カ月前の平成22年11月、県原子力防災訓練で、5キロ圏内の屋内退避訓練を行った。防災無線や広報車で呼び掛けただけだった。10キロ圏内の町民は自分の居場所が避難対象かどうか、すぐには分からない可能性があった。
 「10キロより外の具体的な地名をアナウンスする」。町職員がとっさに判断した。町中心部から西の方角に当たる立野地区や室原地区などに移動すれば、10キロ圏内から脱出できる。町民の自主的な避難先として示した津島地区は福島第一原発から20~30キロ離れていた。
 最初のアナウンスから約5時間後の午前11時すぎ、10キロ圏外への町民の移動がほぼ終わった。
 だが、避難の完了ではなかった。町はさらに厳しい判断を迫られる。町外への避難だった。(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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