東日本大震災アーカイブ

【子ども屋外活動】県教委補助 大幅減 親、負担増に不満 会津の観光にも痛手

南会津町で屋外活動を楽しむ子どもたち。県教委の補助が縮小され、関係者から不満の声が上がる=昨年8月

 東京電力福島第一原発事故で放射線量が比較的高い地域の子どもたちが比較的低い会津などで屋外活動する際の県教委の補助が大幅に縮小された。スポーツ少年団などへの交通費と活動費の助成は打ち切られ、宿泊費も減額となった。放射線量の低減や予算減などが理由だが、中通りの保護者や会津の観光業者からは「まだ線量は高く補助は必要」「観光復興にブレーキが掛かる」と不満の声が上がっている。やむを得ず独自の補助制度を設ける市町村も出始まった。

■家計に響く

 補助が縮小されたのは「ふくしまっ子体験活動応援事業」で、県教委は3日までに各市町村に方針を伝えた。
 事業のうち、スポ少など団体が対象の「体験活動応援事業」は、1人5000円が上限だった交通費と体験活動費が補助対象外となる。学校が対象の「移動教室体験活動応援事業」は活動費の補助上限を1人7000円から2000円に引き下げ、交通費補助は打ち切る。両事業とも宿泊費補助は1泊1人7000円の上限を5000円に減額する。
 さらに、スポ少などの団体の宿泊費補助は7月~9月と12月~~来年1月と期間が限定される。
 県教委は放射線量が低減していることに加え、昨年度は日帰りの学校の遠足や部活動など事業の目的に合わない利用も多かったためとしている。ある県教委の関係者は「原発事故直後だった昨年度と違い、予算が限られる中、大盤振る舞いはできない」と打ち明ける。
 「夏休みは遠征が中心なので事業の縮小は家計に響く。交通費が出なければバスを借りるのも難しい」。小学4年生の娘が少年サッカーチームに所属する福島市の会社員川村修二さん(39)は嘆く。県北地区では放射性物質の影響で、地元で開かれる屋外スポーツの大会が大幅に減っている。市外のチームを招くことも難しく、練習試合は遠方にせざるを得ないのが現状だという。

■回復ブレーキ懸念

 風評被害で教育旅行などが減った会津地方の観光関係者は「補助縮小で観光の回復にブレーキとなりかねない」と不安視する。
 喜多方市の3ノ倉スキー場は昨シーズン約400人が事業を使って来場した。関東圏からの常連が減り、来シーズンも県内の子どもの来場に期待を寄せるが、「むしろ補助額を増やさないと前年並みの利益を上げるのは難しいのでは」と補助内容を戻すよう訴える。
 日帰りでの活動への補助が認められなくなり、「使いづらい」との指摘も。只見町は豪雨災害の復旧工事で民宿などが確保しづらくなる可能性があるという。町観光まちづくり協会は「交通費など全て含めて5000円にすればいいのでは」と日帰りの活動も利用できるよう求めた。

■町が負担

 事業の補助減額を受け、南会津町はスポ少などの団体を受け入れた事業者に対し、一団体につき5万円を上限に補助する制度を設ける。体験活動費やバス代などの団体の負担を軽減し、町内を訪れやすくするのが狙いだ。
 下郷町も観光団体とともに独自の補助を検討するほか、喜多方市はNPO法人を通して実施している「農泊体験」の値下げを視野に入れている。
 昨年度は南会津郡の観光客が4割減少しただけに、郡内のある町の担当者は「観光支援が本来の目的でないのは分かるが、『復興元年』の今年度だけでも補助を維持してほしかった」と本音を漏らす。

【背景】
 東京電力福島第一原発事故を受け、県教委は昨年7月から「ふくしまっ子体験活動応援事業」を始めた。平成23年度は約30億円の予算を計上し、小中学生や幼児が放射線量の低い地域での自然体験やスポーツ体験などをする際に宿泊費や交通費、活動費の一部を助成した。昨年9月までの予定だった事業期間を今年3月まで延長し、当初目標の5万人を大幅に超える35万人超の利用があった。平成24年度は予算を約20億円に縮小した。

カテゴリー:3.11大震災・断面