■金山のふくしま子ども元気村 斎藤真吾さん 34
中通りの子どもたちを奥会津の金山町に招き、自然との触れ合いを楽しんでもらう「ふくしま子ども元気村」が2日に催され、町内の田んぼで田植えが行われた。運営に携わる斎藤真吾さん(34)は「子どもたちのこの笑顔を守り続けたい」と参加者に目をやった。
斎藤さんは愛知県豊田市で生まれ、育った。同県内の高校、理容専門学校を経て埼玉県で理容師をしていたが仕事を辞め、その後、なかなか立ち直れず愛知県の自宅にこもる日々を送っていた。
昨年7月、父の実家がある金山町が豪雨災害に見舞われた。実家で暮らす伯父から、泥出しや片付けを手伝ってほしいと頼まれ、思い切って自宅を出た。
無我夢中で復旧作業に当たる中、ボランティアの仲間ができた。東日本大震災の被災地から応援に来ている人もいた。ボランティア同士の交流を通じ、東京電力福島第一原発事故の影響で、外で自由に遊べない子どもたちを金山町に迎え入れる「ふくしま子ども元気村」の活動が始まった。斎藤さんは昨年9月の1回目の活動から関わっている。
子どもと接した経験がなく、最初は戸惑いがあった。しかし、率先して行動し、参加者と真剣に向き合ううちに、周囲から「村長」と呼ばれ、元気村に欠かせない存在になった。
斎藤さんは、これまで自分のことしか考えていなかった人生を反省し、人に尽くそうと金山町で再スタートすることを決めた。11月に町社会福祉協議会の臨時職員となり、ヘルパーの資格を取得。在宅介護のヘルパーをしながら、元気村の活動に取り組んでいる。
金山町に来て、伸び伸びと遊ぶ子どもの姿を見ると、夏休みに父の実家で過ごすのが一番の楽しみだった自らの少年時代が重なる。「子どもたちのもう1つの古里として、迎え続けたい」と誓っている。
(カテゴリー:連載・今を生きる)