政府が本県沖で実施する洋上風力発電実証研究事業を受け、県は5日までに、小名浜港を風車製造ができる全国初の拠点とするため藤原ふ頭の一部を整備する方針を固めた。ふ頭の地盤の強度を現在の10倍に改修し、世界最大規模のクレーンを設置する。大型風車を組み立て、本県沖をはじめ隣県に供給する態勢を整える。ふ頭への洋上風力発電施設の認証・研究拠点整備も想定している。
洋上風力発電用の大型風車建設が全国で活発になることを見据えての対応。地元の雇用や小名浜港の利活用促進、周辺の地域開発、関連企業誘致につながることが期待される。
関係者によると、藤原ふ頭を、世界最大の出力7000キロワット級の風力発電施設を組み立てることが可能な拠点とする。平成25年度に整備し、26年度から使用する予定。地盤の強度は現在、1平方メートル当たり2トンだが、補強工事により20トンにする。さらに、最高で235メートルに達するクレーンを置く。大型風車の組み立ては、ふ頭に部品を集約した上で、クレーンを使い作業する。ふ頭脇の海上に置いた浮体に乗せて完成させ、船で設置地点まで運ぶ方針。
県は藤原ふ頭整備費用を30億円程度と見込み、国の省庁と予算確保に向け調整する。藤原ふ頭は32.6ヘクタールの用地があるため、認証・研究拠点の整備、部品製造工場の誘致なども視野に入れている。
洋上風力発電実証研究事業では、楢葉、広野両町沖に出力7000キロワット級の浮体式洋上風力発電施設など3基を設置する。27年度以降、周辺に発電施設を増やし、事業化を目指す。
小名浜港は震災の津波被害を受け、国と県が改修作業を進めている。藤原ふ頭は主に輸入木材用として使われていた。
■洋上研究施設 周辺回遊魚の漁場に
洋上風力発電実証研究事業で、県は施設周辺をサンマ、カツオなど回遊魚の漁場として整備する方針を固めた。回遊魚が浮体構造物に寄りつく習性があることを利用した構想で、年内に市町村、漁業者を交えた協議会を設置し可能性を探る。
風車を支える大型の金属製浮体や海底に固定するチェーンに藻を繁殖させる網を設置し、回遊魚が集まりやすい環境を整える。発電施設に漁船が近づくと警告音を発するシステムを設置し、接触事故を防ぐ。
洋上風力発電計画に対し漁業者側から「漁場が失われる」とする反発が出ていることを受けての対応。ただ、実証研究事業の計画地点周辺は、東京電力福島第一原発事故の発生以前、底引き網漁が盛んだった。回遊魚の漁法とは異なるため、漁業者から理解を得ることができるかどうかは不透明だ。
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