■屋内にいる時間を考慮 リスク上昇証明されず
東京電力福島第一原発事故の影響で、福島市などの空間放射線量は県内でも比較的高い状態が続いています。行政にはこのまま暮らしても大丈夫だと言われます。どうして問題がないのか、根拠を教えてください。
【回答者】県放射線健康リスク管理アドバイザー・長崎大大学院教授(放射線医療科学専攻)高村昇さん
例えば、今月5日の福島市の空間放射線量は、毎時0.52マイクロシーベルト、郡山市は毎時0.56マイクロシーベルトでした。単純にこの数値を年間に換算すると、4.6~4.9ミリシーベルトになります。しかし、実際の被ばく線量は、屋内にいる時間などを考慮すればこの値よりもかなり低くなると考えられます。
昨年10月から11月に郡山市で実施したバッジ式積算線量計の測定では平均値は約1カ月間で0.12ミリシーベルト、年間に換算しても約1.3ミリシーベルト程度で、日本の自然放射線による年間被ばく線量(約1.5ミリシーベルト)と同じくらいの数値でした。
国際放射線防護委員会(ICRP)は「なるべく余分な放射線に被ばくしない」という考え方の下、公衆の年間被ばく線量限度を1ミリシーベルト以下と勧告しています。しかし、今回のような放射線災害時には、事故が継続している間は年間20~100ミリシーベルト、事故収束後には年間1~20ミリシーベルトの範囲で徐々に線量を低減化させ、最終的に年間1ミリシーベルトに戻すように勧告しています。
100ミリシーベルト以上の放射線を1度に被ばくすると、がんが発症するリスクが上昇すること、それ以下の被ばくではリスクの上昇は科学的に証明されていません。それを踏まえて、災害時には100ミリシーベルトを超えない範囲のできるだけ低い値で線量限度を設定し、状況に合わせて徐々に低減化させることになります。以上からも、現在の県内の空間放射線量で住民に健康影響が出るとは考えにくいと思われます。
(カテゴリー:放射線・放射性物質Q&A)