■「活躍し元気届ける」 車いすバスケ 佐藤聡選手(福 島)
日本パラリンピック委員会は3日、ロンドン・パラリンピック(8月29日~9月9日)の日本代表126人を発表した。本県関係では男子車いすバスケットボールで福島市の佐藤聡選手(36)=ダイユーエイト=と、いわき市出身の豊島英(あきら)選手(23)=仙台市・宮城県警=、柔道でいわき市出身の半谷静香選手(23)=神奈川県茅ケ崎市・小川道場=が選ばれた。佐藤選手は前回の北京に続き2度目、豊島、半谷の両選手は初出場。佐藤選手らは東日本大震災や東京電力福島第一原発事故で苦しむ県民の思いを背負い「プレーで元気づけたい」と活躍を誓っている。
佐藤選手は郡山市出身。安積二中卒業後の16歳の時、バイク事故で負った大けがで胸から下がまひした。20代で本格的に車いすバスケットボールを始め、東京などのチームでプレーした。昨年1月、宮城県の名門クラブチーム「宮城MAX」に加入し、現在はキャプテンを務める。チームは5月、全国大会4連覇を果たした。
前回出場した北京大会は7位だった。日本として過去最高位タイの成績だったが、メダルに絡む活躍を目指していただけに不本意だった。「リベンジできるチャンスをもらった。ベスト4を狙う」
現在は、5年前に入社したダイユーエイトの福島市の本社で人事部の仕事が終わってから、仙台市まで練習に通う生活を送る。シュートの正確さやプレーのスピードに定評がある。ただ、「高さ」のない日本代表が世界の強豪と戦うには技術に磨きを掛ける必要がある。
会社やチームには震災の津波で自宅を流されたり、放射線問題で不安を抱えたりした仲間がいる。「世界の舞台で活躍し、少しでもみんなに元気を出してもらえれば」。前回大会よりはるかに重い日本代表の意味をかみしめている。
佐藤選手が勤務するダイユーエイトは会社を挙げて日本代表決定を喜んだ。
浅倉俊一社長(62)は「厳しい競争を勝ち抜き、選ばれたことを誇りに思う」と感激した様子。さらに「社内で応援団を結成し、現地で声援を送りたい」と張り切っている。
上司の石上文夫人事部長(56)は「明るく元気な性格で勤務態度はまじめ。仕事と競技を両立させながらの出場は尊敬に値する」とたたえた。
郡山市に住む佐藤選手の父親の武さん(67)は、練習で東京や宮城に通いながら競技を続けてきた佐藤選手の性格を「負けず嫌いで努力家」と明かす。「今回はメダルを目指して頑張ってほしい」とエールを送った。
佐藤選手の妻恵美子さん(41)は東日本大震災後、佐藤選手の練習へのひた向きさが増したと感じている。「福島からの選出を誇りに世界で輝いて欲しい」と願った。
■「恥じぬ戦いを」 豊島 英選手 (車いすバスケ・いわき出身)
車いすバスケットボールの豊島選手はいわき市出身で、震災時に双葉町で働いていたが、その後転職し、佐藤選手と同じ「宮城MAX」に所属している。2人で切磋琢磨(せっさたくま)しながら初出場を決めた。
豊島選手は「日本代表の名に恥じないように、勝利に貢献したい」と意欲を見せている。
■恩返し「金」狙う 半谷静香選手 (柔道・いわき出身)
柔道に出場する半谷選手は前回の北京でいったん出場が内定していたが、視覚障害の認定検査を受けていなかったため、内定を取り消された苦い経験がある。それだけに「本当にうれしい。自分の柔道で金メダルを狙う」と力を込める。
いわき市の東日大昌平高を卒業後、茨城県の筑波技術大に進学。震災当時は茨城県にいて無事だったが、いわき市の家族が一時避難を余儀なくされた。
昨年春に大学を卒業後、柔道のバルセロナ五輪銀メダリストで格闘家の小川直也さんの道場で、職員として勤務する傍ら稽古に励んでいる。小川さんの指導でめきめき力を付け、念願の切符をつかんだ。「育ててもらった福島県やいわきのためにも勝って感謝の気持ちを伝えたい」と決意を新たにしている。
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