東京電力福島第一原発事故からの森林の環境回復に向け、福島県は平成25年度にも年間被ばく線量が1ミリシーベルト以上の民有林約18万3000ヘクタールを対象に間伐による除染を開始する方針を固めた。県土の1割を超える面積で、実施期間は20年程度を想定している。作業で発生する間伐材は復興事業向けの資材や木質バイオマス発電の燃料に用いる計画だ。ただ、事業費は総額で900億円を超えるとみられ、県は国費で全額負担するよう政府に求める。
■事業費、国に要求
県や市町村、個人などが所有する県内の民有林は約56万3000ヘクタールで、県は中通りと浜通りを中心とした約26万5000ヘクタールが年間1ミリシーベルト以上となるとみている。このうち、国直轄の除染地域となる避難区域などの約8万2000ヘクタールを除いた約18万3000ヘクタールが対象で、除染と林業の再生を一体で進める。年間の作業面積は約9000ヘクタールで、今後20年間にわたり間伐と出荷を継続することで木材関連産業を振興させ、雇用の安定化につなげる狙いもある。
県は現在、線量の高い場所から作業に入るか、人の出入りの多い区域から始めるか検討している。今年度内に市町村、個人所有者などの意向を確認し、優先エリアを選ぶ方針だ。
年間の伐採量は、原発事故前とほぼ同じ54万立方メートル程度になると見込まれる。線量の比較的低い森林の間伐材は、県や市町村の復興資材として公共事業に活用し、民間の建築用木材としても流通させる。線量が高い部分の間伐材はチップ化し、木質バイオマス発電施設で燃料として用いる。25年度から発電施設を整備する計画を進めている川内村などと調整に入った。
県は今後、間伐材を木材用と燃料用に分ける線量の基準について検討を進める。
県が2月から二本松市で行った実証実験では、間伐で20%近く線量が下がる効果が確認された。さらに、枝葉や落ち葉の除去を併せて行うことで、50%程度の低減が可能とみている。県森林計画課は「除染と間伐を組み合わせた長期間にわたる事業を展開することで、県内林業の再生につなげたい」としている。
■1ミリシーベルト以上除染県、必要性訴え
県は、1ヘクタール当たりの間伐と搬出に掛かる費用を基に、事業費は900億円を超すと試算している。財源確保に向け、環境省が今後取りまとめる「森林の除染方針」に、1ミリシーベルト以上の地域での除染の必要性を盛り込むよう強く求める。
方針に明記されれば、生活圏と同様に除染費用は国の全額負担となる可能性が高くなる。同省は森林全体の除染を「不要」とした考え方を見直す方針で、県は今月下旬にも設けられる環境省との協議の場で除染の必要性を訴える。一方、県は林野庁に対し、25年度予算編成で林業再生費用の確保を求めている。
■環境省の国内森林除染 「早急に方針示す」 細野環境相
東京電力福島第一原発事故で汚染された森林全体の除染は不要とする環境省方針案に県などが反発していることについて、細野豪志環境相は17日の閣議後の記者会見で「福島の皆さんの意見を聞いて考え方を整理し、少なくとも当面の方針について、できるだけ早く出したい」と述べた。
細野氏は「きちんと検討会の中で聞くのが望ましく、福島県と調整している」と説明した。また、8月末にもまとめる森林除染の当面の方針は「今の段階で技術的に判明していることを基にした、暫定的なものにならざるを得ない」と話した。
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