【オーストリア・ウィーンで鈴木信弘記者】東京電力福島第一原発事故を受け、福島県内に活動拠点を設ける方向で調整していた国際原子力機関(IAEA)は、本県を国際的な活動拠点とするため専門家を派遣し、除染と健康管理、放射性物質のモニタリングなどで県、福島医大と共同研究プロジェクトを実施する。原子力安全に関する世界最高水準の知見を生かして本県の実情を元に研究・開発を進め、世界に発信する。31日午後(日本時間同日夜)、佐藤雄平知事とウィーンのIAEA本部で会談した天野之弥事務局長が明らかにした。今後、具体的な内容を協議し、来年にスタートする予定だ。
会談で佐藤知事は「除染や健康管理の分野で本県と共同研究をお願いしたい」と要請。これに対し天野事務局長は「全力を挙げて福島の支援に取り組み、IAEAと福島の共同プロジェクトを実施したい。IAEAのみならず、世界の有識者の知見を集め、(福島を)国際的な活動拠点としたい」と全面的に本県を支援する考えを示した。天野事務局長は12月に郡山市で開催される「原子力安全に関する福島閣僚会議」出席のため来県。県、福島医大と共同研究プロジェクトの具体的な内容を発表する。
IAEAは除染や放射線管理、被ばく線量と人体の関わりなどを専門とする研究者数人を本県に派遣する。県が平成27年度開所を目指す「県環境創造センター(仮称)」の建物の一角に活動拠点を置く方向で検討しており、県や福島医大と共同研究できる体制を整える。共同研究はセンターの完成を待たずに、情報交換、専門家の本県への定期的滞在などを通じて徐々に着手する計画で、来年から始める予定だ。
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