■大熊町教育長 武内敏英さん 68
大熊町教育長の武内敏英さん(68)が東京電力福島第一原発事故による全町避難から学校再開までの軌跡をつづった「大熊町 学校再生への挑戦-学び合う教育がつなぐ人と地域」を出版した。「教育を最優先に、教育を諦めずにここまで来た」と、激動の1年半を振り返る。
武内さんは事故後の3月17日、避難先の田村市総合体育館で渡辺利綱町長から「とにかく学校を立ち上げてほしい」と指示を受け、原発からなるべく離れた県内で、3000~4000人の町民を受け入れてもらえる自治体を探し、会津若松市に白羽の矢を立てた。翌日から同市との話し合いに動き、25日には受け入れが決まった。
4月16日には同市文化センターで幼小中の合同入園・入学式にこぎ着けた。級友や恩師と再会し、子どもたちの笑顔があふれる会場の中で「ふるさとを遠く離れての特異な入学式に胸に熱いものが込み上げた」と振り返っている。
著書は四章構成で、第一章が3月12日から学校再開までのドキュメント、第二章では教職員や児童、生徒、保護者らの声から現場の1年間を見詰め直している。第三章では施設を提供してくれた同市河東地区をはじめ全国、全世界からの支援の数々を紹介、第四章は町の教育が進むべき道を記した。
武内さんは「学校で教えることは、人と人とのつながりの大切さ。知識や技能も大事だが、大変な経験をして、本当に学んでほしいことを再認識した」と語る。今後は対面と対話や心のケア、読書、体験学習の4点を大切にすることを基本に「大熊の復興に役立つ人材を育てるよう努力したい」と誓っている。
著書には町長はじめ50人が「声」を寄せている。A5判、220ページで、巻頭に8ページのカラー写真グラフ「今、大熊の子どもたちは」を収録した。1890円。
問い合わせは京都市のかもがわ出版 電話075(432)2868へ。
(カテゴリー:連載・今を生きる)