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今を生きる 心に古里団結の行進 県内外から95人

2年ぶりに行われた大熊町消防団の秋季検閲。渡辺町長(左から4人目)らが点検する中、各地から集まった団員は古里への思いを強くした=会津若松市

■大熊町消防団 若松で2年ぶり秋季検閲
 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故で全町避難が続く大熊町消防団は22日、会津若松市の旧河東三小校庭で、2年ぶりの秋季検閲を行った。ばらばらになっていた団員95人が県内外から集まり、規律訓練や分列行進を繰り広げた。町は避難区域再編後「5年間帰還しない」方針を決めたが、「故郷を離れても、絆を守っていこう」と声を掛け合い実現した。団員は古里の復興を願い、心を1つにして力強く行進した。
 大熊町消防団には今年4月現在、183人が在籍。県内は役場機能のある会津若松市やいわき市、県外は東京都や埼玉県などで避難生活を送る。仮設住宅や借り上げ住宅に住み、仕事の関係で家族と離れて暮らす団員も多い。
 「会津に集まれ」。会津若松市に避難している吉田稔団長(64)らが中心となり2年ぶりの検閲を決めた。避難後は団員が集まる機会はなかった。「こんな時こそ集まろう」。団員が互いに連絡を取り合い、95人が集結した。このうち約20人は東京や埼玉など県外から駆け付けた。
 久しぶりのため団員の動きは最初、ぎこちなかった。しかし、次第に動きを思い出し、最後は本来の力強い行進となって終了した。
 消防団の誇り-。団員は充実感に満たされた表情を見せた。検閲した渡辺利綱町長ら町幹部も胸を熱くした。吉田団長は「離れていても団員の心は1つ。高い士気を保とう」と呼び掛けた。震災での活動が評価され、消防団に防災功労者内閣総理大臣表彰が贈られたことを報告。「受賞記念」のタオルを全員に配った。
 守るべき古里は遠い。団員が離れ離れでは本来の活動もままならない。それでも吉田団長は「仮設住宅の防火啓発など、団員がそれぞれの地でできる活動を続けていく。そしてまたみんなで集まりたい」と胸を張った。

指揮で団員鼓舞 
■ラッパ隊隊長 鎌田恭行さん
 15人のラッパ隊を束ねる隊長の鎌田恭行さん(45)は山形県から駆け付けた。
 震災前は海の近くで花卉(かき)栽培に従事していた。自宅は津波で流された。家族は無事だったが、鎌田さんは仕事のため山形県に、父母は会津若松市、妻と長男は福島市に離れて暮らす。検閲の連絡を受けると知人らに声を掛けた。津波で流された指揮棒を新たに買い求めた。
 当初、ラッパ隊の編成は難しいと、幹部は録音演奏での対応を考えた。だが、15人のうち11人が各地から集まった。検閲前に音合わせをし、本番では高らかに響かせて団員を鼓舞させた。
 鎌田さんは「仲間と再会しつながりを確認できた」と検閲の意義を強調する。「避難生活と向き合い、いつか必ず故郷に戻るという勇気が湧いてきた」。指揮棒を強く握り締めた。

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検閲でラッパ隊を指揮する鎌田さん

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