東日本大震災アーカイブ

中間貯蔵施設どこに 政府候補地12カ所示す 大熊、双葉、楢葉で調査の方針

中間貯蔵施設などについての意見交換会であいさつする平野復興相(右前列手前から2人目)=8月19日、福島市

 東京電力福島第一原発事故で拡散した放射性物質の除染で発生する汚染土壌を一定期間保管する中間貯蔵施設は、建設に向けてようやく動きだした。政府は8月19日、双葉郡8町村との意見交換会で候補地を初めて具体的に示し、既に施設設置を打診していた大熊、双葉、楢葉3町の計12カ所での現地調査に協力を求めた。今年度中に具体的な用地を選定したい考えだが、地元は慎重姿勢を示しており、政府の工程表通りに進むかは依然、不透明だ。

■地元は慎重姿勢
 政府案では、大熊、双葉、楢葉3町の計12カ所が施設候補地として記された。町別では大熊町が9カ所で最も多く、次いで双葉町2カ所、楢葉町1カ所。いずれも6号国道から東側の地域が想定されている。
 候補地選定に当たり、環境省は航空写真や地図、地質データを基に、埋め立てが容易であるなど有効活用しやすい地形であることや、6号国道、常磐自動車道など主要幹線道路からのアクセスの良さなどを踏まえて判断した。
 同省は「大熊町は、双葉、楢葉両町に比べ候補地に適した土地が多かった」と説明している。同様の理由から、県内市町村ごとの廃棄物の搬入先は、大熊町が47市町村、双葉町9市町村、楢葉町3市町とする想定。中間貯蔵施設で収容する汚染廃棄物量の比率を大熊町が6割、双葉町が3割、楢葉町が1割と試算した。
 県、双葉郡8町村は政府から現地調査の実施への同意を求められ、調査を受け入れるか協議に入った。
 大熊町では、町議会が「判断の材料になる青写真を示してほしい」と環境省に伝えた。「復興を進めるため」として住民が早期建設の要望書を同省に提出した経緯もある。一方、双葉、楢葉両町は「一方的」「住民帰還の妨げになる」などと反対姿勢を示しており、温度差は鮮明だ。
 8月30日に開かれた実務者レベルの初会合では、考え方に開きがあり、議論の入り口にもたどり着けなかった。県は8町村に意向を確認した上で方向性をまとめたい考えだが、住民の反発も根強く、難航が予想される。

【中間貯蔵施設設置候補地の政府案要旨】
◆設置候補地の考え方
・除染による土壌や廃棄物の搬入などに必要な敷地面積を確保する
・除染土壌や指定廃棄物が大量に発生する地域になるべく近い
・主要幹線道路(6号国道・常磐自動車道)へのアクセスが容易
・自然災害に備え、断層や浸水域軟弱地盤などを避ける
・河川の流れの変更などを最小限とする
◆設置候補地
・双葉町の福島第一原発北側と大熊町の同原発南側、楢葉町の福島第二原発の南側
◆搬入の考え方
・相双、県北などの9市町村は双葉町へ、いわき、広野、楢葉の3市町は楢葉町へ、残り47市町村は大熊町への搬入を想定
・受け入れ先よりも放射線量が高い地域からは持ち込まない

※中間貯蔵施設
 東京電力福島第一原発事故を受けた福島県内の除染作業で、放射性物質に汚染された土や大量の廃棄物が出ることから、最終処分が可能になるまでの間、安全に貯蔵しておくための施設。環境省は必要な総容量を最大2800万立方メートルと推計している。政府の工程表によると、遅くとも平成24年度中に設置場所を決め、平成27年1月ごろから搬入を開始する。貯蔵開始から30年以内に県外で最終処分するとしているが、最終処分地はまだ決まっていない。

カテゴリー:震災から1年6カ月