「どうせ福島には住めない所があるんだから(汚染廃棄物は)全部そこに持って行けばいい」。新潟県柏崎市に避難している大熊町の大橋清隆さん(51)は、県外の討論会で聞いた言葉が今も忘れられない。町内に中間貯蔵施設ができることで、就職や結婚などで町民が差別的扱いを受けるのではないかと懸念する。
ただ、設置はやむを得ないとも考えている。「全国の原発周辺にも必ず貯蔵施設を併設させ、県外から汚染廃棄物が搬入させないようにしてほしい。保管中の補償も必要だ」と訴える。
同じく大熊町から茨城県日立市に避難する小磯英位さん(73)、リイ子さん(66)夫婦も中間貯蔵施設設置に理解を示す。「多少犠牲になっても容認すべき。その代わり、全町民が帰れるだけの規模を持つ、新しい大熊町が必要になる」
双葉町から栃木県に避難している会社役員の女性(37)は「東京電力が持つ県外などの土地で管理しろと言いたい」と憤る。一方で「現実的に双葉郡の中で放射線量が高く、今後、利用が難しい土地も出てくるはず。手放す覚悟も必要になるのでは」の見方を示す。
「賛成とも反対とも言い切れない」。双葉町から郡山市に避難している会社員男性(33)は複雑な心境だ。「設置された場合、古里への帰還は困難になる可能性がある。かといって、双葉郡以外に汚染廃棄物をどこに運ぶのが適切か、分からない」と話す。
8月10日に町内の警戒区域が、早期帰還を目指す避難指示解除準備区域に再編された楢葉町。比較的、放射線量が低く、町民からは「中間貯蔵施設の設置は町民帰還に逆行する」と反発する声も少なくない。
一方、政府は受け入れ先よりも放射線量が高い地域からは汚染土壌を持ち込まない方針を示している。いわき市の仮設住宅に住む楢葉町の女性(70)は「難しい問題で簡単に判断できない。でも(町内設置に)反対ばかりしていても前に進めない」と明かす。
(カテゴリー:震災から1年6カ月 )