富岡、大熊、浪江の各町から「仮の町」構想の候補地として挙げられているいわき市。8月28日に行われた意見交換会では、仮の町設置に言及していた首長が初めて、渡辺敬夫いわき市長に直接、協力を求めた。市はコミュニティーが閉鎖的な空間にならないよう、分散型での設置を求めているが、各町からは集中型の設置を望む声もあり、具体的な形はいまだ見えない。
市は「仮の町」の課題として、役場庁舎などの公共施設が設置された際に、「二重行政」になる恐れがあることや、規模によっては市の都市計画に影響を与えることなどを挙げている。
既に、多くの避難者を受け入れていることによる住宅事情の悪化、医療・福祉施設の不足などの問題が顕在化している。
7月に平野達男復興相が「仮の町」の説明に郡山市を訪れた際、原正夫市長は「市民にどう影響するかを十分考慮しつつ、避難者支援を考えていきたい」と述べ、影響を踏まえた上で受け入れる考えを示した。しかし、政府や双葉郡の首長らからは7月以降接触がない状態が続いており、市の担当者は「具体的な形が分からないと、課題も何も見えない。市民の協力を得られないのが一番怖い。早めに具体的な話を持ってきてほしい」と訴える。
「仮の町」構想の受け入れ先候補地の自治体でつくる協議会には会津若松市の室井照平市長も参加している。室井市長は「縁あって若松に一緒に暮らしているのだから、今後も応援する。共に復興を目指したい」と話す。公営住宅の必要性が生じた際など、随時対応していく考えだ。
福島市の瀬戸孝則市長も「市としても協力し、早く安心して生活できる状況をつくっていきたい」との姿勢だ。その上で、「ある程度分散して設置し、地域に溶け込んで生活することが理想でないか」との考えを示す。市は、市の総合計画や都市計画に避難者の生活をどのように組み込むかや、住民が帰還した後の「空洞化」を防ぐことなどが課題とみている。
(カテゴリー:震災から1年6カ月 )