川内村は1月の「帰村宣言」に続き、3月末には役場機能を避難先の郡山市から本来の村内に戻したが、今なお多くの村民が村外で暮らす。村民の帰還には雇用の場の確保が大きな課題となっている。遠藤雄幸村長に企業進出の現状と雇用の見通し、課題などを聞いた。
-3月末に役場機能が村内に戻り5カ月が過ぎた。
「村の人口約2800人のうち週4日以上を村内で過ごす村民は750人ほどだ。まだまだ震災前のようにはいかないが、村として村民が安心して戻れる環境を整えている。働き盛りの子育て世代、つまり若い世代がどれだけ村に戻ってくるかが大事だと思う。そのためには雇用の場を確保する必要がある」
-村内に企業進出が相次いでいる。
「総合製造業の菊池製作所と木造住宅建築メーカーの四季工房とは工場立地に関する協定を結んだ。省エネルギー製品などの製造・販売のコドモエナジーとは近く協定を結ぶ準備を進めている。この他にも数社から工場進出の打診を受けている。不安も多かった『帰村宣言』だったが、これだけ多くの企業に賛同を頂き、感謝の気持ちと同時に感動している」
-どの程度の雇用が想定されるのか。
「菊池製作所は震災前から工場立地に関して声を掛けていただいたが、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故で中断を余儀なくされた。その後も菊池製作所の意向に変わりはなく旧富岡高川内校の校舎と体育館の改修工事が急ピッチで進められている。雇用枠50人のうち31人が採用され、研修を行っている。どういう会社なのか様子を見ている村民も多い。10月にも操業を開始し、業務内容や勤務態勢など全体像が見えれば、働きたくなる村民が増えるはずだ」
-雇用と帰還を今後、どう結び付けるのか。
「当面は村民を対象に雇用し、(村民で)足りなければハローワークなどを通じて村外から募集する。『雇用と定住』が大きな柱ではあるが、震災前のような村にすぐに戻るとは考えていない。『戻れる人から戻る』を基本に村民が安心して帰還できるよう少しずつ環境を整えていきたい」
-国や県への要望は。
「国は農地転用の手続きをもっと緩和すべきだ。復興特区法は津波被災地に限っており、川内村は適用外になっている。適用地域が見直され、農地転用の手続きが簡素化されれば、工業団地の造成などが迅速にできる。県の『ふくしま産業復興企業立地補助金』を使わない進出企業などに対する税制面の優遇措置なども必要だ」
※えんどう ゆうこう
川内村生まれ。原町高、福島大教育学部卒。村議を経て平成16年の村長選で初当選。20年に無投票で再選し、24年は新人2人を退け3選を果たした。原発事故に伴う避難自治体の中でいち早く「帰村宣言」し、村の復興に取り組む。双葉地方町村会長などを歴任。57歳。
(カテゴリー:震災から1年6カ月 )