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【富岡町「帰還できない」宣言】町民「一律賠償早く」 住めなくなる... 町、国に実現を訴え

仮設住宅の集会所に飾ってある夜の森の桜の写真を見詰める鎌田さん

 富岡町が「今後5年間は帰還できない」と宣言した26日、避難生活が長引き、苦しい暮らしを続ける町民からは「町が国に求めている一律賠償を早く実現してほしい」との切実な声が相次いだ。一方、帰還を望む住民は「5年間も戻れなければ古里に本当に住めなくなってしまう」と悲痛な叫びを上げた。町は宣言をきっかけに一律賠償の実現に向けて一層働き掛けを強めていく。

■長引く苦しさ
 「宣言した以上は町民にとって賠償が大きな問題になる。町民が平等に賠償を受けられるように町は迅速に動いてほしい」
 大玉村にある富岡町の安達太良仮設住宅自治会長の鎌田光利さん(57)は、住民の一律賠償を目指した町の宣言にある程度の理解を示す。東電が公表した土地・建物などの財物賠償基準では、原発事故から6年が経過すれば全損扱いとなる。その上で「被災者は5年、10年先のことよりも、今の暮らしのことで精いっぱい」と長引く避難生活の苦しさを訴え、国や県に手厚い支援をするよう訴える。
 政府案に基づき放射線量に応じて避難区域を再編した場合、町内は5年間は戻ることが難しい「帰還困難」、住民の帰宅や通過交通を認める「居住制限」、早期帰還を目指す「避難指示解除準備」の3つに分けられる。
 いわき市の仮設住宅に避難する無職男性(65)は「帰還しない5年間を含め、その後の生活のためにまとまった賠償金が必要」と早期の賠償を求めた。
 一方、郡山市で暮らす帰還困難区域になる可能性のある本岡地区の派遣社員の50代男性は一律賠償に否定的だ。「戻れるのなら家の片付けなどやりたいことは山ほどある。自由に出入りできる人と賠償が同じくなるのは不公平」と不満を漏らす。

■何をすれば
 「5年間も帰れないなんて...」。郡山市に避難する本岡地区の農業男性(50)は町が帰還できない宣言をしたことを聞いて落胆の表情を見せた。一時帰宅で数回戻っているが、1年半が過ぎ家の中はカビの臭いがひどい。「5年たったら本当に住めなくなる。5年間、何をすればいいのか」と将来を見通せない現状に「まずは復興住宅の建設を急いでほしい」と注文した。
 郡山市の仮設住宅で暮らす夜ノ森地区の無職先崎ツネさん(78)は「除染が進んでいない現実を考えれば5年間帰還できない宣言は仕方がない」と受け止める。ただ、「高齢者の多くは1日も早い帰還を望んでいる」と苦しい胸の内を打ち明けた。

■心分断の懸念
 「宣言により国がどう出てくるか。町としてはこうした取り組みを積み上げるしかない」。町職員の1人は町議会が全会一致で可決したばかりの帰還に関する宣言書を見詰め、ため息をついた。
 町が帰還に関する宣言をした背景には、一律賠償を実現させる町と町議会の強い思いを国に向け発信する狙いがある。政府が他町との公平性などを考慮して一律賠償に難色を示しているからだ。
 町議会が同じく全会一致で可決した町災害復興計画(第一次)に盛り込まれた健康管理や雇用確保、教育の再生など復興に必要な多くの施策は一律賠償が実現して避難区域が再編され、除染やインフラの復旧などが進むことが前提となる。
 町職員の1人は「5年を待たずに帰還したい町民もいるはず。ただ、一律賠償が実現しなければ町民の心が分断される懸念がある。宣言をきっかけに国の適切な対応をさらに強く求めなければならない」と表情を引き締めた。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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