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古里へ戻る決意秘め きょう「ぎふ清流国体」開幕馬術競技出場 愛馬と共に挑む

遠く離れた古里への思いを胸に愛馬と共に国体での活躍を誓う(右から)杉本隆雄さん、葵生君、晃美さん

■杉本隆雄さん(48)晃美さん(46)葵生君(15)親子
 岐阜県で29日に開幕する「ぎふ清流国体」の馬術競技に、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故により南相馬市小高区から千葉県に避難している杉本隆雄さん(48)は妻晃美さん(46)、長男葵生(あおい)君(15)の親子3人が出場する。乗馬クラブを家族経営していたが、原発事故に伴う警戒区域になり馬と共に避難した。家族の絆、馬との触れ合いを支えに国体出場を勝ち取った。古里でクラブを再開する-。希望を胸に、共に避難生活を送る愛馬にまたがる。
 隆雄さんは避難先の千葉県富里市で知人の乗馬クラブの一部を借り、古里から連れてきた競技馬を飼育する。「福島の馬術競技を盛り上げることは自分の使命。そのために結果を出す」。目前の本番に向けて愛馬の状態を確認しながら、自分に言い聞かせた。
 仕事でオランダに滞在中だった昨年3月11日、震災が発生した。混乱の中、2日後には自宅に戻った。家族との再会を喜ぶ間もなく、馬の避難の手配に取り掛かった。原発事故で避難指示が出ていた。「馬を残せば、みんな死んでしまう」。乗馬クラブを経営する県内外の知人に頼み込み、引き取り先を見つけては、馬を運んだ。
 20年近く前、夫婦で力を合わせて故郷に設立した乗馬クラブだった。必死に働いて馬を少しずつ増やしてきた。クラブの運営は軌道に乗り始めていた。悔しさ、悲しみが胸に込み上げた。
 昨年4月には千葉県富里市でクラブを再開できたが、間借りの身ではそう多くの馬を育てられない。避難前の24頭から12頭になった。従来の顧客がいない土地での経営は難しく、他のクラブで乗馬を指導し生計を立てている。
 再び古里の地で乗馬クラブを再建するまで諦めるつもりはない。野馬追の伝統が残る古里で、高校生のころから馬術に本格的に取り組み、平成7年のふくしま国体では優勝した。指導者として何人もの選手を育てた。
 県内には原発事故で避難し、競技継続が難しくなっている馬術選手もいる。自分がやらなくては-。高校1年生の長男はジュニアの国内トップクラスの選手に成長していた。妻と一緒に競技に復帰し、家族で国体出場を目指す決意をした。「福島に少しでも元気を届けたい」。遠く離れた古里に活躍を誓った。

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