■高校演劇の元指導者 児玉さん座長 市民劇団「いわき青春座」
いわき市の湯本、小名浜両校の演劇部を高校演劇日本一に導いた元教諭の児玉洋次さん(71)=筆名・石原哲也=が座長と演出を担当し、人気を集めてきた市民劇団「いわき青春座」は13、14両日の公演を最後に解散する。団員は熱い思いを心に抱き、最後の舞台に立つ。
劇団は小名浜高の創立100周年記念式典で記念公演したことをきっかけに平成19年、同校OBを中心に設立された。旗揚げ時の作品は児玉さんが「大衆娯楽芝居のような演劇を」との思いから書き下ろした「正直屋物語」。会場には常に笑いの渦が起き、演劇の魅力に取りつかれた大勢のファンにも支えられ活動を続けてきた。
昨年は東日本大震災の影響で中止したが、市内では毎年1回のペースで定期公演を開きほぼ5年間、県内各地の高校や施設でも上演してきた。
現在の団員は約20人。演劇への情熱は今でも変わらない。しかし、震災後に仕事や家庭の事情などから、稽古に集まる人数は減ってきた。児玉さんは「今の生活を考えれば無理強いはできない。だが、劇を楽しみに来てくれるお客さんの期待を裏切るようなこともできない」と解散を決めた思いを語る。
演劇経験は全くなく入団し、最初で最後の主役を務める萩久典さんは「しっかり主役を務めたい」と抱負を話す。小名浜高が日本一になった時のメンバーで設立当初から団員の加藤勇太さんは「今までの思いを込め、精いっぱい演じる」と誓う。
最終公演には旗揚げ時と同じ「正直屋物語」を選んだ。児玉さんは震災後、原発事故で古里を追われた被災者のつらい思いや置かれている現状を新作として書き下ろしたが、被災者の心情を考え破棄したという。
公演はいわき市の小名浜市民会館を会場に13日は午後6時半、14日は午後1時に開演する。入場料は大人1000円(当日券は1300円)、高校生以下は500円(同700円)。
売り上げの半分は震災で被害を受けたいわき市の豊間小、中の両校に寄付する。問い合わせは劇団事務局 電話0246(31)0188へ。
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