東日本大震災アーカイブ

担当者対応苦慮 事務量増、送付先確認など 明細書発送準備

 避難区域市町村は1日も早い財物賠償の実現に向けて課税明細書の発送準備に入った。しかし、事務量の増大による作業の滞りや送付先の確認に手間取る可能性もあり、担当者に苦悩ものぞく。

楢 葉
 土地や建物の登記が課税明細書と一致しない複雑なケースが想定される上、住民と東電の個別交渉の時間を考慮すると「支払い時期は見通せない」とする。

富 岡
 課税明細書の発送時期に苦慮する。担当者は「震災と原発事故をめぐる諸課題が住民間のあつれきを生んでいる」とし、「他の町村と発送時期をたがえると不公平感が生じてしまうのでは」と懸念し、適切な発送時期を見極める考えだ。

川 内
 双葉郡内で先行して財物賠償の手続きを検討していた。早ければ今月中に課税明細書が住民に届く。対象は約160世帯。東電が明細書を基に算定した賠償額を村民に通知するのは来年1月末ごろになるとみられる。

大 熊
 10日に避難区域が再編された。これまで再編問題も絡み、賠償への取り組みは大きく遅れていたが、一気に本格化するとみられる。町企画調整課は「住民の手続きが円滑に進むようにできる限りの手を尽くしたい」としている。

双 葉
 避難者の動向把握に頭を痛めている。特に町内に固定資産を保有しているが、居住地は町外で、原発事故で避難した人の動向をいかにつかむかが課題になっているという。町によると、町内に固定資産を持っていて町外に居住していた住民の避難先はほとんど把握できていないという。住民が郵便物の転送手続きを済ませていない場合は課税明細書が届かないため、担当者は「転送手続きを済ませてくれていることを願うばかり」と語った。

浪 江
 送付する課税証明書は「平成22年1月」が基準になっていることを周知すべきだ−と指摘した。基準月以降に所有権を移転した場合、現在の土地所有者に明細書は届かないことになる。町は登記を移したケースは少ないとみているが、混乱の元になりかねないと不安視する。

葛 尾
 区域再編を終えていない。先行して課税明細書の送付準備を進める。委託先の電算業者が不在地主や共有地分などを含め、約1200件の平成22年度の固定資産税明細書を作成中で、今月下旬にも完成する予定。実際の支払いは区域再編後になるため、来年1月以降になる見通しだが、早期賠償を求める住民の声を踏まえて迅速に事務手続きを進める。

田 村
 双葉郡と同様の手法で委託業者が課税明細書の作成を進めている。年明けには対象者に発送できる見通し。同市都路町の避難指示解除準備区域は双葉郡などの自治体と比べて財物数が少なく、事務作業に混乱はないと考えている。

南相馬
 課税明細書は通常の手続きの中で納税通知書と併せて発送しているため、住民の混乱を回避するためにも別の形で賠償手続き用の書類を発行し直す必要があるのでは−と指摘した。さらに、財物賠償の手続きが始まれば、業務量の増大による職員不足は否めない。

川 俣
 双葉郡内の町村と異なり、避難者が固定資産税台帳の写しを町役場で取得し、東京電力に賠償を請求する方式を採用する。住民が必要書類を直接、入手する手法の方が、自治体から書類を届ける手法より時間を短縮でき、より早く賠償手続きに入れると判断したためだ。

飯 舘
 来年1月上旬にも課税明細書を郵送する考え。納税者と居住者が異なる場合もあり、いずれに支払えばよいか混乱する事例も出てくる−と想定している。

カテゴリー:震災から1年9カ月