■苦境に立つ農林水産業
原発事故以降、本県農林水産業は風評被害などで苦境に立たされている。行政や生産者団体などは地道な放射性物質検査を通じ、1日も早い風評払拭(ふっしょく)を目指す。
本県の主力産品のコメは昨年から全量全袋(1袋30キロ)検査に取り組んでいる。県は各市町村単位でつくる協議会にベルトコンベヤー式測定器計約190台を配備。各協議会で一袋ずつ放射性セシウムが食品衛生法の基準値(1キロ当たり100ベクレル)以下かどうかをチェックしている。100ベクレルに近い数値が検出された場合、より精密な測定器で再検査している。
24年産米の検査数量は約1200万袋。このうち、昨年12月27日現在で999万2822袋の検査を終えた。基準値を超えたのは71袋で、全体の0.0007%にとどまっている。基準値を上回った袋は隔離し、流通を防いでいる。今年も自家消費米など残りのコメの検査を継続する。
果樹などもきめ細かい検査で安全性を確認している。24年はモモで約9800点、リンゴは約2千点を調べた。生産者は樹木の高圧洗浄など対策を講じており、検出された放射性セシウムは全て基準値以下だった。
ただ、東京都中央卸売市場の24年本県産モモの平均価格(1キロ)は340円で全国平均よりも115円安かった。全国平均に対する価格は74・7%で、23年の54・7%からは持ち直したものの、22年の90・9%を16・2ポイントも下回っている。県は「正確な情報を発信し、安全性をアピールするしかない。引き続き信頼回復に全力を挙げたい」としている。
■23年の農業産出額前年比479億円減少
本県の平成23年の農業産出額(菌茸類を除く)は1851億円で、前年に比べ479億円減った。産出額の推移は【グラフ】の通り。震災と原発事故に伴う農畜産物の価格下落などが影響した。
主な内訳はコメが750億円(前年比41億円減)、野菜・芋類が408億円(同166億円減)、果実が197億円(同95億円減)、畜産が417億円(同124億円減)などとなっている。
20年以降、減少が続いており、早急な対応が求められている。
(カテゴリー:福島第一原発事故)