福島県は東京電力福島第一原発の廃炉作業中の事故に備え、「暫定的に予防的防護措置を準備する区域(PAZ)」を5キロ圏とする。原子力規制委員会は現時点の原子力災害対策指針で福島第一原発のPAZを明示していないため、県は緊急事態に対応できないと判断し、暫定的に定める。4日に県庁で開いた県防災会議原子力防災部会で、県地域防災計画原子力災害対策編の修正案に盛り込む方針を示した。
県は福島第一原発のPAZについて、原子力災害対策指針で他の国内原発では「おおむね5キロ」とされたことを踏まえ、範囲を決めた。5キロ圏内には大熊、双葉、浪江の3町の一部が含まれるため、県は3町と協議し「大字」単位など詳細な線引きや対策を決める。避難区域再編に伴う行政機能や住民の帰還を視野に、緊急事態が生じた場合の通報連絡、避難誘導の具体的な態勢などを検討する。
ただ、大熊、双葉両町の役場は原発から5キロ圏内にあり、町の災害対策本部の設置場所などが課題となる。県は両町と役場の移転先などを協議する。
規制委は福島第一原発のPAZについて、他の原発と一律に導入することは「必ずしも適当ではない」とし、検討課題に挙げている。県は規制委が範囲を明示した段階でPAZを修正する。
県は福島第二原発のPAZも5キロ圏とする。「緊急時防護措置を準備する区域(UPZ)」については、原子力災害対策編の昨年の修正で導入した「暫定的な重点地域の範囲」を適用する。
今回の修正は、原子力災害対策指針などを踏まえ、今年3月に完了させる。東電が支援拠点を整備し、オフサイトセンターと通信連絡態勢を整えることなどを盛り込む。
規制委が緊急事態の際に居住制限、避難指示解除準備の両区域に立ち入っている住民の放射線防護の必要性を指摘したことについては、今後、具体的な対応を検討する。
原子力防災部会には県の担当者や原発周辺の市町村の首長らが出席。市町村側から、PAZやUPZでの安定ヨウ素剤の事前配布の必要性を指摘する意見が出された。県は規制委の検討を踏まえて配布の在り方などを判断する。
※予防的防護措置を準備する区域(PAZ=Precautionary Action Zone)
原子力規制委員会が防災対策を講じる区域の一つとしている範囲。原子力災害対策指針で東京電力福島第一原発を除く全国の原発は「施設からおおむね5キロ範囲」が目安とされている。指針の改定原案では、原発の全非常用炉心冷却装置の注水不能など全面緊急事態が発生した場合、PAZの住民は即時に避難する考え方が示されている。緊急時防護措置を準備する区域(UPZ=Urgent Protective Action Planning Zone)は30キロ範囲が目安だが、県は「暫定的な重点地域の範囲」として原発周辺など13市町村全域とする。
(カテゴリー:福島第一原発事故)