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【国策への異議15】審理支える態勢不足 裁判官に心理的重圧も

福島原発訴訟の控訴審判決が言い渡された仙台高裁の法廷=平成2年3月

 福島原発訴訟で、原告側の住民は「裁判所は科学技術的問題にも実体に踏み込んで審理できる」と主張し、司法が原発の安全性を丁寧に検証するように求めた。
 しかし、二審の仙台高裁の判決は、原子炉の設置許可を「国の専門技術的裁量行為」と位置付けた。その上で、裁判所の役割については「国が出した設置許可が審査指針や許可当時の科学技術水準に合い、合理性を持つかどうかを審査する」と、司法判断に一定の範囲を示した形となった。
 最高裁も福島原発訴訟と同時に出した伊方原発(愛媛県)訴訟の判決で、裁判所の審理対象を「行政側の審査基準に不合理な点があるか、判断の過程に過誤や見過ごしがあるかどうか」との見解を示した。

■専門知識
 「原発についての専門的で、分からない事柄があっても、聞く相手がいなかった」
 福島原発訴訟の二審・仙台高裁で左陪席の裁判官を務めた弁護士の木原幹郎(73)は、当時の裁判所の態勢を思い起こす。
 木原によると、比較的、事件数が多く、高い専門性が必要とされる「特許事件」には、特許庁から専門職員が東京地裁などに出向し、調査官として裁判官を支える仕組みがある。
 脱税などの事件では、国税庁の専門職員が東京地裁や東京高裁に出向し、調査官として助言するケースがある。
 裁判官は、法学部などの文系出身者が多数を占める。しかし、木原によると、福島原発訴訟の審理が仙台高裁で行われていた当時、原子力に関する科学知識を補充するための専門家は裁判所に出向していなかった。原子力に関する勉強会や研究会なども裁判所関係者の間で開かれなかった、という。「科学者や技術者の判断に、科学知識を備えていない裁判官は口を挟みづらいのが正直なところだった」

■統治制度
 行政訴訟の判決が過去に「政府などの体制寄りだ」と指摘されたことがある。
 木原は、ある裁判を例に挙げ「政府を困惑させるような判決を下した裁判官の中には、本人にとって不本意と感じられる人事があったと思う。将来の人事につき不利益を受けたくない気持ちが働けば、反体制的な判決は出したがらないのではないか」と弁明する。
 木原は山形地裁に勤務した昭和50年代前半、労働問題をめぐる訴訟で、原告の労働者側に一部有利な判決を下した経験がある。「体制の根幹に触れるような問題ではなかったから...」と振り返る。
 「原発訴訟では裁判官は心理的に重圧を感じる」。木原は、高度で専門的な科学技術や、統治制度をテーマにした訴訟で、裁判官が置かれる難しい立場を説明する。
(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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