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【国策への異議20】判事集まり共同研究 事故踏まえ意見交わす

事故処理作業が続く東京電力福島第一原発。事故を踏まえ、司法は原発にどう関わるのか(手前の円筒形は汚染水タンク。奥は、左から1、2、3号機の原子炉建屋=10日、共同通信社ヘリから

 「社会的耳目を集める複雑困難訴訟に関して、こうした訴訟に内包される本質的な問題に焦点を当て、民事裁判の役割や訴訟運営について共同研究を行います」
 最高裁の司法研修所が昨年1月に開いた特別研究会の資料に記された一文だ。情報公開を請求した福島民報社に対して、一部を除き文書が公開された。
 研究会の対象者は全国各地の地裁で民事・行政事件を担当する判事で、参加者名簿には三十数人が掲載されている。
 共同研究のテーマは「民事裁判の現代社会における役割」。研究会で取り上げられた問題の1つに原発があった。具体的には次のような論点項目が挙げられていた。
 「福島第一原発事故を踏まえて、裁判所は、原発関連訴訟に対し、どのようなスタンスで審理・判断に臨むべきか」
 「福島第一原発事故及びその後の状況は、原発関連訴訟の今後の事件動向にどのような影響を与えるか」
 「国の原子力行政の帰趨(きすう)は、原発関連訴訟の審理運営に対してどのような影響を与えるか」

■判断の枠組み
 研究会で出された提出問題の1つは、福島第一原発事故を踏まえた「今後どのような類型の訴訟が考えられるか」だった。
 これに対して、研究会に出された意見では「訴訟類型については差止訴訟や仮の救済等も考えられ、早期に判断を迫られる事件も出てくるように思われる」「放射能汚染の広がりや安全審査での想定事項等、本件事故(福島第一原発事故)を踏まえ従来の判断枠組みを再検討する必要があると思われる」などが出された。
 別の提出問題には「裁判所は、原子炉施設の安全性を審理判断するに当たり、専門的・科学的知見をどのような方法により取り入れていくべきか」があった。
 これに対する意見では「安全性に関する鑑定については、専門家の間でも、科学的評価や将来予測に関して見解が分かれる問題であることを考慮し、複数の鑑定人による共同鑑定が望ましいであろう」との考え方が寄せられた。
 裁判所が専門的知見を得るために考えられる方策の1つとして、専門家が裁判官をサポートする専門委員の活用や、同じような訴訟を扱っている係属裁判所間での情報共有のための方策などに言及した意見も出された。

■評価と懸念
 福島第一原発事故を踏まえた裁判所の動きについて、脱原発弁護団全国連絡会で共同代表を務める弁護士の海渡雄一(57)は「衝撃的な事故を受けて、裁判官自体も考えようとしている姿勢は見て取れる」と一定の評価をする。その一方で、原子力規制委員会が原発の新たな安全基準を7月に施行する点に触れ「司法が原子力規制委員会の新基準に追従しないかどうかを国民は注視するべきだ」と指摘する。
 福島原発訴訟の弁護団長を務めた弁護士の安田純治(81)は「多少は反省もあるのかと思う」としながらも、「これまでの裁判所の審理方法が間違っていないかのような前提で議論がされているのであれば、おかしい」と指摘した。また、裁判官の研究会の存在についても「憲法には『すべての裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される』とある。結論を誘導するようなことはないのか」との懸念も示す。
 福島原発訴訟で原告団事務局長を務めた早川篤雄(73)は「われわれ素人の住民も一から勉強して訴訟を闘ってきた。事故を踏まえ、裁判所には司法の番人として真っ正面から原発の安全性と向かい合う姿勢を望む」と語った。(文中敬称略)
 =第12部「国策への異議」は終わります=

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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